繋がるキッカケ
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「お前ら、さっきなんつった?」

優たちは救出した少女の証言を基に、吸血鬼たちを襲撃していた。

だが家族を人質に取られていた少女の証言は偽り。
敵の数は情報より多かった。

だが、優を中心とした奮闘により、殲滅していく。



「人間は醜い?
家族を人質に取られたら平気で同族を売るクズだ?」



優は反論しなかった。

それどころかその通りだと。

「そうだよ、家族のためなら人間は何でもする。
平気で嘘もつくし、鬼にでも悪魔にでもなる。

それが醜いってんなら……」

優は刀を強く握った。





「その人間の醜さに怯えながら死ね、吸血鬼」






三葉も殲滅を指示する。

優たちは数を上回る敵相手に勝利を納めた。
そして捕らわれていた人間たちを解放した。

外に出れば、例の助けた少女。

「ご…ごめんなさい……。
わ…私……私、」

騙してしまったことに罪悪感感じているらしい。

「お前は自分の家族を守ろうとした、それだけだ」

優は彼女を責めなかった。



「正しいことをしたんだ。
だから謝るな」




「てめぇらなんてことをしてくれたんだ!」



雰囲気をぶち壊すような怒声。

「なんで吸血鬼を殺した!?あいつらがいなくなったら俺らは……子供たちはどうなる!?」

その男は少女の父親らしい。

「お前ら日本帝鬼軍は人口調整とか言って俺らを渋谷や新宿の都市に入れてくれないじゃないか!なら外で暮らす俺たちはどうなる!?そこらを歩き回るバケモノから誰が守ってくれる!?」

それは他力本願ともいうが、正論でもあった。

なんせただの人間はヨハネの四騎士に敵わない。

「城壁に守られた温室で暮らす特権階級どもがヒーロー気取りで偉そうに…」





「俺は……俺は子供の頃……ずっと吸血鬼の都市にいた」





優の言葉に男は黙る。

「残飯食わされて、毎日毎日血を抜かれて。
それでも自分は家畜じゃないと言い続けて生きてきた」

誰かにこんな話をするのは初めてかもしれない。

「そしてある日、脱走を企てた」

男だけでなく、仲間も聞き入っている。

「そのせいで仲間はみんな死んだ……」

今でも思い出す。
まだ息をしていたルカやミカを残して逃げた自分。



ーーいや、自分が逃げ切るために見捨てた



それは今でも後悔している。

あの時一緒に死ねばよかった。
そう思うこともある。

だけど…。





「それでもあの日、家畜をやめようと決めたのを後悔したことは1度もない」





「だからなんだよ…」

男は手を握りしめ、震わせている。

「くそが……俺だって…俺だって…。
子供たちの血を好きで吸わせてたわけじゃ…」

流した涙は子を思う親の辛さが現れていた。

「……文句言って悪かった」

男は娘を助けてくれたことに感謝を述べる。


「ちょっと待ってください。
渋谷は日々進展しています」


シノア曰く、今日くらいの人数なら受け入れられるそうだ。

「なっ本当か!!?」

「はい、さあ行きましょう」

こうして彼らは無事渋谷に保護されることになった。










「さっきの話、本当か?」



三葉は優の隣に並んだ。

「お前は吸血鬼の都市に仲間を置いて…」

「勝手に聞くんじゃねぇよ。
あと俺の過去に立ち入るな」

そう突き放そうとした優と呼び止める。

「なんだよ?」

三葉は意を決したように顔を上げた。



「そ…その…さっきはありが…」



だがその言葉は最後まで紡がれることはなかった。

「い、いや…なんでもない」

「なんだよ」

「な…なんでもない。
とにかくあたしはお前が嫌いだ!!」


((またそれかよ〜))
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「みっちゃんてば〜♪」
「なっ…なんだ!?」
「あはは〜、そういうことですかぁ」
「何がだ!何がそういうことだ!?」
「いえいえ、応援しますよ」


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