女王クルル
== == == == ==

「じょ…女王陛下……」
「あ…あなたがなぜここに……」

吸血鬼たちは狼狽えている。


「あらあら。
こんなに美味しそうな匂いの血を大量に流して…」


ミカを中心に広がる血。

それを指先でなぞり、ペロッと舐める。

「…それで?」

声音を変え、ミカから視線を外す。





「これはいったいどういうことかしら?
フェリド・バートリー」





頭を撃たれ、倒れているフェリドに投げられた言葉。

ニヤ
口角が上がる。

ミカは信じられないものを見たような顔だ。

フェリドは何事もなかったかのように起き上がる。



「これはこれは。
我らが吸血鬼の女王、クルル・ツェペシ」



大仰に手を広げて言う。

優に撃たれた辺りの髪は血で濡れている。

「お久しぶり、君はいつも綺麗だねぇ」

「あら、ありがとう。
あなたも相変わらずいやらしい顔で笑うわねぇ」

皮肉で返せば、ひどいなぁと傷付いていない声で返される。

「人間に頭を銃で撃たれたばかりなのに、君への愛の力でなんとか笑顔を作ってるんだよ?」

クルルは笑って、愛?と言う。

「あなたが愛してるのは私が持つ権力でしょう?」

「ふふ、それも好きだけどね」










「それで?
第七位始祖のあなたがたかが人間の子供に撃たれた?
冗談でしょ。そんな戯言、誰が信じる?」



「でも事実だ」

クルルの疑いの眼差しを軽く躱そうとする。

「いいえ」

しかしそれは即座に否定される。

「あなたはワザと逃がした。
私の飼ってた天使(セラフ)を」

彼女の声には多少の怒りが含まれていた。




「1人は逃げ、1人は死にかけてる、それに1人は…」




息の荒いミカ。
短い間隔で懸命に息を吐きだしている。

「この事件に弁解ができるというなら今すぐ…」

「いや〜〜」

初めてフェリドがクルルの言葉を遮った。


「弁解すべきは君の方じゃないかなぁ?」


クルルが怖い顔をする。

「天使(セラフ)の呪いに触れるのは吸血鬼の世では法に触れるはず。僕が上位始祖会に一言言えば…」

「…え?よく聞こえなかった」

クルルは肩に乗っていた生物を遠ざける。

「上位始祖会に…何?」

「だから〜、僕がこの件を……」



ガッ

鋭い爪がフェリドを狙う。




それを横に飛んで避ける。

キュッ
続けて攻撃を繰り出すクルル。

「!!?」

予想外の攻撃に対応しきれず、モロに食らってしまう。


それでもクルルは攻撃の手を止めない。

辛うじて避けた攻撃。
それは床を大きく抉る。

防戦一方のフェリドを追い込む。



「(はは、ちょっと怒らせすぎたかな?)」



少し焦っている風にも見えるフェリド。

クルルの攻撃を避け、初めて反撃を繰り出す。

「……」

しかし、それは腕を切り落とされ、無意味と化す。

腕が遠くに落ちた時、フェリドは床に倒された。
容赦なく喉元を踏み付けられる。





「よく聞こえなかったんだけど、もう1度言ってくれる?」




((圧倒的実力))
== == == == == == == == == ==
「(頭は撃たれるし、腕はちぎられるし…。
もっとルカちゃんの血、飲んどけばよかったなぁ)」


|



TOP