偽りのマボロシ
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「俺が鬼に負けないってことを今証明してやるよ」



持っていた刀を落とす。

「は?」

シノアも呆けている。

「ほら来いよ鬼!!
こっちは丸腰だぜ!!」

「ちょっ…そんな無茶な!!」

あまりの馬鹿行動にシノアも対応に困る。



「う…ガァアアア!!」

鬼に憑りつかれ、斧を振り回す。

それをしゃがんで避ける。

ガッ
斧の柄を掴んだ。

そして相手を蹴飛ばし、奪い取る。


「おっしゃ!!
武器を奪っ…!!」




世界が闇に落ちた。










気付けば真っ白な世界。


「……え?」

家畜だったころの服。



「優ちゃん。
こんなところで1人ぼっちでどうしたの?」



「み…ミカ…?」

ミカだけじゃない。
ルカも茜も……みんないる。

「お…お前らみんな……生きてたのか…?」

「あはは、何言ってるの?」

ミカの声が冷たく聞こえた。





「僕ら死んだに決まってるじゃん」


「そうそう、私たちみんな吸血鬼に殺されて」


「優くんだけ逃げたんだよ」





みんな怒ってない。
表情は昔のままなのに。

声が、言葉がとても冷たい。

「…ち、違う……逃げたんじゃ…」

「逃げたよ。
おまけに全然復讐もしてくれないし」

ミカの影が広がる。


「お願い優くん。
殺された私たちのために復讐して?」


ルカがミカの隣に立つ。

「なんなら僕が力を貸すよ。
優ちゃんの心に僕を受け入れてくれれば…」

ミカに抱き締められる。

「そうだな…復讐のためには確かに力がいる……」

「でしょ?だから早く僕を受け入……」





「だがてめぇは誰だ?」





強い瞳の優。

ミカから距離をとる。

「ミカは…ルカは……。
あいつらは俺に復讐しろとかいわねぇんだよ。
いっつも頭よくて…馬鹿みてぇにみんなに優しくて」

優はミカに掴みかかった。

「なのにてめぇはなんなんだよ?」

「ぐっ、放っ…」



「俺の大切な家族の真似なんかしやがって……。
殺すぞコラっ!!」



「くっ…」

ミカは煙が弾けるように消えた。
茜たちもみんな消えていた。


「…、………」

残っていたルカと目が合った。
昔のルカと同じ笑顔。

「ルカ…?」

優に背を向けると、影が光に消されるようにいなくなった。



((俺の心はあいつらを信じてる))
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「俺が鬼に勝った、そうだよな?」
「えーと」
「もうグレンの馬鹿も無視できねぇ、そうだろ?」
「明日からでも吸血鬼殲滅部隊の訓練校に通うことになるでしょう」
「よっしゃああああああああああああっ!!!!
(ついに、ついにここまで来たぞ、ミカ、ルカ。
俺はここで吸血鬼を殺せるようになる)」


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