読めないカレ
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「やあ、元気?ルカちゃん」



先日の出来事などなかったかのような雰囲気。

彼らしいと言えば彼らしいのだが…。

「フェリ…、」

もう少しで名前を呼んでしまいそうだった。


「…何の用ですか」
「惜しいなぁ、もうちょっとだったのに」

それは名前のことを言っているのだろうか。

ミカとは違い、ノックもなしに扉を開け入ってくる。




「大事なミカ君との再会、どうでした〜?」




「貴方がいなかったのでより喜べました」

感謝しているがお礼を言うのも癪なのでそう言う。

「あは、ミカ君と同じこと言っちゃって」

全然傷付いていない。
フェリドの心を傷付けるのは至難の業かもしれない。


「ところでルカちゃん」

読んでいた本から顔を上げる。

「朝ごはん、ちゃんと食べてくれました?」

「?……まぁ」

孤児だったため毎日豪華な食事などありえなかった。
それに体調不良でない限り残すのも悪い。

最近は調子がいいので残さず食べているのだ。







「あれぇ?

実は僕の血を混ぜてみたんだけど……。
何か変化ないかな〜?」







「ー!!」

本を置いて立ち上がる。

その拍子に机に当たり、グラスが倒れる。
中に入っていたジュースがこぼれる。

「(そんなっ……まさか、)」

人間は吸血鬼の血を飲むことで吸血鬼化する。

だがその過程で何があるのかは知らない。

だから本当ではないかと信じてしまう。


「あは、焦ってどうしました?」
「なんで…なんでそんなことするのっ」

ルカは人間として吸血鬼と分かり合いたかった。

フェリドは人間は分かり合いの嫌いな種族だと言った。

だから少しでも話の通じる吸血鬼を対話相手とした。

それが嘘でも本当でも、どちらかを選ばなくてはならない。
なら自分のままで自分の選んだ道を生きたかった。




「ルカちゃんが好きだからに決まってるじゃないか」




ルカは動きを止め、フェリドを見た。

「は…何言ってるの…?」

フェリドはいつも笑っているから考えを読みにくい。
だが、真剣な顔をしている時ほど読めないことはない。

要はフェリドは分からないということだ。


「だから、好きだから僕と同じになって欲しい」


少しずつ近付いてくる。

それから逃げるように1歩ずつ下がる。

「ミカ君に近付けるかもって言ったけど、嘘。
ルカちゃんが吸血鬼になったらミカ君は離れていくよ」

そうなって欲しかった、と言う。



「ねぇ、僕の血を飲んでーーー僕の隣に来てよ」








































「な〜んてね、嘘だよ♪」




((何が本当で何が嘘?))
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「…………は…?」
「だから嘘だよ、嘘」
「じゃあ血を混ぜたっていうのは…」
「それは嘘。
じゃなきゃ今頃ルカちゃんは吸血鬼になってるよ」


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