出世のナヤミ
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一号執務室から出てきた三葉。

「今回の吸血鬼劇谷一役買った功績で階級が上がるかもしれないらしい」

どうやら出世するようだ。

「まぁ当然だな。
あたしにはその価値があるしな」

自信満々に言う。

「あっそ」

一方で優は全く興味がなさそうだ。





「ちょっと!!少しは突っ込みなさいよ!!!」





怒鳴られ振り向く。

「あんたもわかってるんでしょう!?
あたしはあの戦場で全く役に立たなかった!あんなに偉そうなことばかり言ってたのにまた…!!」

誰も助けることができなかった。

今までの三葉の行動の根底にはそれがあるらしい。

「あたしだけ出世する、名門三宮というだけで…」

それを卑怯だと笑う者も当然いるだろう。


「笑うなら……」

震える三葉の肩に手を置く優。

「あんま気負うなよ、ゆっくりやろうぜ」

優らしく長ったらしく慰めたりしない。

「ミスで仲間が死んでもお咎めなし!役に立たないのに出世!
優秀な姉様と違って二流だって皆があたしを渡ってることくらいは…!」





「三葉、俺は笑ってない」





真剣な顔をしている優。

「…………でも、」

納得しきれない三葉。

「てか知らなかった。ま〜さか自分のチームに2人もお嬢様がいるなんてさぁ」

優はシノアが柊家と言うのもさっき知ったのだ。

それを言えば馬鹿なのか?と心配される。


「でも庶民なんてそんなもんじゃねぇの?
お偉いさんのこととか興味ねぇし」

届かないものに憧れるより、生き残ることが先決だ。

優が興味あるのは吸血鬼を殺すことだけ。

「チームの仲間が出世して何か悪いことってあんの?」

三葉はため息をついた。



「まったく……馬鹿と話してると小さなことで悩んでる自分が愚かに見えてくるな」



「いっぱい偉くなって俺を助けてくれよ」

優は階級に囚われず吸血鬼を殺したい。

だがここにいる限り上からの命令は絶対。

だから階級を持った仲間が必要になる。

「見てたと思うけど俺、家族を吸血鬼に囚われてんだ。
あいつを…」

ミカを思い出す。

そしてシノアが言っていたルカのことも。





「家族を俺は取り返したい」




((俺にできないことがお前にはできる))
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「あたしは"吸血鬼に仲間がいる疑いのある危険人物を見張れ"と上から命じられた」
「へぇ、つまり俺を見張れって?」
「ああ、裏切り者の可能性がある、とのことだ」
「で……お前はどう思ってんの?」
「"ありえない"と言っておいた。
"誰かを騙せる様な脳みそがあるようにはとても見えない"とな」
「あははお前らしいな」


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