上司のギネン == == == == == 「グレン中佐、5日探しました」 漸く見つけたグレン。 日本帝鬼軍新宿官舎の地下にいた。 傷も癒えたらしく、書類とにらめっこしている。 「へぇそりゃご苦労なこったな」 「少し、聞きたいことがあります」 「答えないよ、だから帰…」 それは5日前、戦場でシノアに返した言葉を同じ。 「優さんがまだ目を覚ましません」 シノアはグレンの言葉を遮って言う。 「いったいグレン中佐は優さんに何をしたいんですか? …いえ、優さんで何をしようとしてるんですか?」 視線を鋭くする。 そして懐から例の薬のケースを取り出す。 「優さんの"黒鬼"シリーズの装備は特殊なものだから特殊配合の薬を渡せーーと中佐に言われてそうしましたが、あの暴走はその薬のせいじゃないんですか?」 戦場でのアレは何だったのか問う。 「怒ってんのか?」 シノアは表情を消したまま。 「で…なんて答えたら納得する? 何もしてないって答えたら安心するか?」 「馬鹿な!何もしてないわけが…」 「じゃ人体実験してるって言ったら怒るのか? か弱い人間が…崩壊した世界で生き残るにはどうしたらいい? 吸血鬼を殺すには?ヨハネの四騎士を始末するには? お前の姉"柊真昼"が開発した"鬼呪装備"は一体何人の犠牲の上に完成した?"鬼呪装備"なしに人間はこの世界で生き残れたか?」 「それは……」 人体実験が正しいとは誰も言わない。 だがそれでも、生き残るにはそうするしかなかった。 「なら今更綺麗ごと吐かすんじゃねぇよガキ」 今を生きている自分たちが否定することはできない。 「それともまさかお前、優に惚れたか?」 「なっ…」 シノアの顔が赤くなり、目を反らす。 「まあお前らがどうなろうが構わないが、ガキ同士の色恋をいちいち俺に報告してくるなよ」 それだけ言って椅子をくるりと回し背を向ける。 「帰れ」 「待ってください。私の質問に…」 「か、え、れ」 「…………」 強く言われ、口を閉じる。 「ああそれと、あの薬5日で抜けるから優の奴目を覚ますぞ。 好きなら側にいてやれよ」 ((真実は聞けず仕舞)) == == == == == == == == == == 「……そろそろ起きてください。 優さん? はは、惚れてる…? そんなまさかぁ。 ……でも早く目を覚ましてくださいね、優さん」 ← | |