撤退のヴァンパイア == == == == == 「これどうする、フェリドくん」 やってきたクローリーを肩越しに見る。 「う〜ん。 人間がわらわら増えてきてなんか気持ち悪いから逃げる」 人間を家畜と見ている吸血鬼。 人間も家畜に囲まれるのは気分が良いものではない。 「は…相変わらずプライドないなぁキミ。 で、僕はどうしたらいい?」 一応呼びつけられたため指示を仰いでみる。 「死のうが生きようが好きにすれば?」 「えー、呼んでおいてそれかよ」 たまったもんじゃない。 「あはは、さてじゃあ帰ろうか」 笑って済ませるフェリドは流石だ。 それを許せるくらいでないと彼の派閥にはいられない。 つまりクローリーは心が広く気長なのだ。 「僕がやりたかったことはちゃんと終わったし」 「ん?やりたかったこと?」 フェリドはチラリと視線を流しニヤリと笑った。 「こっちの話。 じゃあねークローリー君、ルカも行くよー」 ルカを抱えてどこかに消えてしまう。 「……」 残ったクローリーは首を傾げることくらいしかできない。 「いやぁ〜、酷い目に遭いましたねぇ」 建物の屋上を次々飛び移っていく。 「……どこ行くの?」 「ミカ君のトコ。 回収して帰らないと」 クルルのお気に入りですからねぇ、と言う。 「ふぅ〜ん、…肩大丈夫?」 血の滲んでいる肩を見て少し心配する。 吸血鬼の再生能力で治っただろうか。 鬼呪のせいでまだ傷が塞がっていないかもしれない。 「あは〜、心配してくれるんですかぁ?」 「別に」 自分を助けたせいで怪我をしたなら少し悪いとは思う。 「ルカちゃん助けて負った傷なのに〜。 だから………お礼に血を吸わせてよ」 ある屋上で足を止める。 「は?……った、」 断る前に牙が首筋に刺さった。 ジュル… 「……もう治ってる」 血を吸われながらもフェリドの肩を見たルカ。 肩の傷はちゃんと塞がっていた。 「ぷはぁ〜……バレちゃいました?」 牙を抜き顔を上げる。 そこには満面の笑みがある。 「それじゃあ、ミカ君拾って帰りましょうか」 ((今日は楽しかったですねぇ)) == == == == == == == == == == 「あ、流石にもう名前憶えてくれた?」 「ん〜……フェルト君?」 「あはは……ここまでくるとワザととしか」 ← | → |