効かなかったジュフ
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「何で入って来なかったの〜?」

広間を出てすぐのところにルカが立っていた。

「大切な会議してたんでしょ?
……それに、行ったらミカが困るから」

「あは、本音は後者でしょう?」

答えないルカの腰を抱いて歩き始める。



「ところで、何で屋敷を抜け出してるの?
一応、扉に呪符貼っておいたはずだけど……」


ルカは懐を漁り、1枚の紙切れを出す。

「これのこと?」

「そうそう、殺した人間からもらったんだけど」

「普通に剥がれたけど?」

ヒラヒラと揺らす。




「…人間ももう少し良い呪符を開発してくれればねぇ。
そんなことだから貴族相手に効かないんだよ」






クルルの居城を出る。

サングィネムを歩いていると子供たちが元気に駆け回っている。

ルカはフードを被らされる。
あまり人間や吸血鬼に顔を見せないようにと言われている。

フェリドが居なくても律儀に守っている。

「(知らない人に顔見られるの好きじゃないし…)」

実は人見知りな一面もあるのだ。
孤児院時代はそうでもなかったが、成長するにつれて、だ。



「君かわいいねー」


フェリドが目を向ければ慌てて逃げていく子供。

「あらあら」

「あらあら、じゃなくて。
子供をそういう目で見るの止めてよ…」

年端もいかない子供に向けるにはどうかと思う視線だ。

「僕ら吸血鬼は血しか摂れないんだから、美味しそうだなぁと思っても仕方ないじゃない」

「可愛いかどうかでってこと」

フェリドが美少年美少女好きなのは十分知っている。





「え〜、どうせ吸うならかわいい方が……あ、嫉妬?

心配しなくてもルカは綺麗だよ。僕好み♪
でも嬉しいなぁ、嫉妬してくれるなんて」





ルカは大きなため息をついた。

「…もう勝手に思ってて……」


「…あ、あの…」


幼い子供の声。
周りに人はおらず、自分たちに対するもの。

振り返ってみれば子供が1人いた。

黒髪は優を思い出すが、その子は褐色の肌をしていた。

「フェリド様に血を吸っていただいたら色々ご配慮してもらえると聞いたんですが……」

「(…うわぁ……有名なのかな)」

正直フェリドに引いた瞬間だった。




「…んー?それ誰から聞いたのかな〜?
ミカちゃん?それともルカ?」




フェリドがこちらに向いたので首を横に振る。

ここ数年で知ったことだが、言いふらしたりはしない。

可哀想な犠牲者が増えるのは心が痛む。


「まあいいや。
それじゃあ行こうか」

フェリドは子供を連れて歩き出す。

屋敷に戻りたくなくて、別のところに行こうとすると…。

「勝手に屋敷抜け出したと思えば、今度は放浪?」

「………」

仕方なく帰ることにした。


((ただ弱いだけ…?))
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「月鬼ノ組ってエリートからもらったんだけどなぁ」
「…使用期限が過ぎてた…とか?」
「なにそれ、そんなものまであるの?」
「いや、知らないけど…」
「ん〜、僕ら吸血鬼じゃ使いこなせないとか?」


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