差し伸べられたテ
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「貴様、いったいどういうつもりだ?」

「何が?」

椅子から立ち上り、フェリドを睨み付けるクルル。

「何故ミカエラをここに連れてきた?
それにさっきの映像ーー私を陥れるつもりか?」

不穏な殺気を纏って歩み寄ってくる。

「この都市でそんなことしたらすぐに君に殺されちゃうじゃ…」


ドッ

クルルが腕を振り上げれば床が割れた。




「今殺してもいいんだぞ」




視線だけで殺せてしまいそうだ。
…と、冗談はさておき。

「おわわ、こっわ〜い♪」

……もっと冗談みたいな男がいた。

フェリドは下手な演技をしながらミカの背中に隠れる。

「でも、もう殺せないでしょう?」


いまフェリドが死ねば真っ先に疑われるのはクルルだ。


「いや、前から殺せなかったか」

声のトーンを下げて言う。

「僕が死んだら僕の持ってる秘密が上位始祖会に届くようになってるかもしれないしねぇ?」

ミカの肩から顔を覗かせているフェリド。

その瞳は昏く、何を考えているかまるで読めない。





「まさか吸血鬼の女王が禁忌の研究"終わりのセラフ"に手を出してるなんて〜。あんなものに触れていったい女王は何が欲しいのかな〜?」





クルルの視線が今まで以上に鋭くなる。

「あは、そんなかわいい顔で睨まないでよ。
ドキドキしちゃうから」

少なくとも殺気を向けられてドキドキするのは普通じゃない。

フェリドはミカの後ろから出てくる。

「優ちゃん逃がしちゃったのは僕だから、バレたら僕も処罰されるけど………あれ!あれあれ、それってつまり」

何かに気付いた風を装い、楽し気な声で言う。



「僕らは秘密を共有した仲間ってことじゃないの?」



ミカの肩を掴んでクルルに手を伸ばす。

「やったー、やっと僕ら仲間になれたねー♪」

満面の笑みで言う。

クルルが動かずにいると、表情を変える。
彼らしくない顔に。







「手を握れ。
そして僕に陥落しろよ、クルル・ツェペシ」







自分より上位相手に命令口調。

それは階級が実力と直結してしまう吸血鬼世界では、あまりにも危険で愚かな行為だ。


「なんちゃって♪」

すぐに笑みを取り戻し、手を引く。

「じゃ今日はこのへんにしておこうかな。
間違って殺されるのも嫌だし」

それでもまた来るつもりのようだ。

パンとミカの腰を軽く叩く。



「次は仲良くしてね〜♪」


((不確定な立場への勧誘))
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「また友達できなかったな〜。
帰ってルカに慰めてもらおうかな」
「…どこをどう見ても自業自得でしょ」
「あれ、居たの?
入ってくればよかったのに〜」


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