![]() == == == == == 広間には3人の吸血鬼がいた。 クルル、フェリド、そしてミカ。 そこには幾つもの映像が映し出されている。 通信の向こう側にいるのも皆、吸血鬼たちだ。 「さっさと東京新宿で起きた出来事について報告しろ」 この場はそのために設けられたものであった。 「じゃあ新宿での出来事について報告しま〜す」 と言っても、あらかじめ提出した資料にほとんど記してある。 「一言で言えば相変わらずひどかった。人間どもは欲望を暴走させ、手を出しちゃいけない研究にすぐ触れちゃう欠陥品でした」 続いて映像を見るように言う。 ーーうおおおおおおおおおおおおああ!!! 映し出されたのは人ならざるモノに変貌を遂げる優。 映像が終われば吸血鬼たちのざわめきが押し寄せる。 「おいなんだ今のは」 「あれではまるで…」 「あんなものが実用化されたらまた世界は…」 パンパン 「はいはーい、気持ちはわかりますがお静かにお願いします」 その場を静め、話を続ける。 「そうです、何と人間どもはついに、」 大仰に手を広げる。 「禁忌の魔術"終わりのセラフ"の兵器化に成功しつつある! これは由々しき問題であります!」 「だ…だがあの研究は第三位始祖クルル・ツェペシ様が……"百夜教"を壊滅させることで止めたはずではなかったのか?」 クルルが肯定する。 8年前に自分が止めた、と。 「百夜孤児院で研究されていた"終わりのセラフ"の因子を持った子供は残らずーー私がこの手で殺した」 ミカは自分の耳を疑った。 「ほっほぅ〜クルル様にはそんな命令が下っていたのですか」 初耳、と笑って言うフェリド。 「で、被検体は全部殺した……と?」 チラとミカを見る。 「ああそうだ」 「ではなぜこんなにも研究が進んでいる?日本には"百夜教"を除いてここまで研究が進んでいる組織はなかったはずだが」 第二位始祖が冷静な声で意見を述べる。 「まあでも最近の人間は侮り難いですからねぇ…」 最近で言えばヨーロッパの方でも話題が上がった。 "終わりのセラフ"の実験をしている人間の魔術組織があると。 「そこは僕が皆殺しにしたよ」 第三位始祖レスト・カーが口を挟む。 「でも、もしも日本の管理に失敗していたならクルル。 これは大きな責任問題…」 「黙れレスト・カー」 同じ第三位でも仲が良いというわけではない。 「それは私に喧嘩を売っているのか?」 「そうかもね。君の手に余るのなら、僕がいつでも日本の王の座を代わってあげるけど?」 「でしゃばるなよガキが」 鋭く睨みをきかせる。 「ガキ?はは、200年くらいしか変わらないじゃない。 おまけに実力は僕の方が…」 これ以上放置すると止まりそうにない。 「まあまあお二人とも落ち着いて」 それを見越したフェリドが穏便に済むように仲裁する。 「じゃあクルル様は確かに"セラフ"の因子を持った子供は全員殺したーーということでいいんですね?」 「私は失敗などしない」 話が一区切りつき、次の議題を持ち出す。 「ではその人間への対策はどうされるのですか?」 「…基本姿勢は変わらない。 本隊を出して日本帝鬼軍に所属する人間は皆殺しにする!」 ((吸血鬼内の派閥)) == == == == == == == == == == 人も吸血鬼も同じ。 誰かの上に立とうとする。 誰かを下に置こうとする。 ← | → |