偏ったヨクボウ == == == == == 「あらミカ、来たの。 もう血が切れたころでしょう。 いまちょうどあなたの餌を作ってあげて…」 ポタッ 容器に落ちる血液。 「血……血っ…!!」 ミカはクルルの手首を掴み、乱暴に引っ張った。 カシャン……容器が割れる音が響く。 ごくん……ごくん…… 「ああ…そう、そんなに渇いてたの」 自身に噛み付いたミカを咎めず、優しく抱き締める。 「もう……仕方ないなぁ」 「ーー!」 はっとしたミカがクルルを突き放す。 「……あ…ごめんクルル。取り乱した…」 「いいのよ、血が足りなければ誰だってそうなる。 吸血鬼の欲望は人間と違って血に対してしかないから……」 食欲、性欲、征服欲……あらゆる欲が血への欲へ。 「なら次はもう少し多めに血のストックをくれないか」 先程のミカの行動で1本台無しになった。 それを指摘され、申し訳なさそうなミカ。 「…それで?」 声音を変えたクルルは報告を求める。 「新宿を襲って人間どもに会ってきたんでしょう?」 「…その件についてはむしろ君が僕に話すことがあると思うけど……上位始祖会でのあの話はいったいなんなの?」 クルルは複雑な色をその瞳に宿した。 ((ただ血を求めるだけの人生)) == == == == == == == == == == 「あの男なんかは我慢という言葉を知らないでしょう」 「…フェリドのこと?」 「えぇ。毎日のようにルカの血の香りが漂ってくるわ」 「っ!クルルは……ルカの血を飲んだことあるの?」 「さぁ、献上されたものに混ざってなければ、ないわ」 「なのにルカの血の匂いだってわかるの?」 「4年前に嗅いだもの。あの濃い血は忘れられないわ」 ← | → |