すれ違うフタリ
== == == == ==

「そりゃ…、」
「?」

2人の視線の先には……。


吸血鬼を引き連れた銀髪の男。


「あいつ…フードかぶってねぇ…。
貴族か…?」

訝しむ優とは対称に、表情を明るくしたミカ。




「フェリド様!!」




「は?」

吸血鬼であろう男に笑顔で駆け寄るミカに戸惑う優。

「お…おいミカ!」

ただその場で声をかけることしかできない。


「やあミカ君。
今夜も僕の館に来るのかい?」


お願いします!と笑い合う姿は仲睦まじげに見える。

「いい子だね。
君の血は美味しいから大歓迎だよ」

そう言ってミカを撫でるフェリド。

その紅い瞳が流れるように優に向く。



「今日はそっちの子も来るのかな?」



「はぁ?行くわけーーむ?」

背後から忍び寄ったミカに口を塞がれる。

「彼は恥ずかしがり屋さんなのでまた……」

むーーっ!!と唸る優を無視してフェリドに笑いかける。

「そお?それはざーんねん。
じゃあまた館で会おうか」

「はい!」










「ミカお前…。
自分から吸血鬼に血ぃ飲ませてんのか!?」



ありえねぇと言いたげな顔をしている。

「そうだけど…何か文句ある?」
「文句ってお前…」

前を歩くミカに、続ける言葉を探す優。

「フェリド様な吸血鬼の中でも貴族の家柄でね、血を提供したらなんでも買ってくれるんだ」

美味しいものも食べられるし…。

吸血鬼から支給されるものを不味いと言っていた優。

それを聞いても納得できないといった顔をしている。

「ここで生きていくには要領よく頭使っていかないとね」

じとーっとミカを見た優は…。



ゴンッ

「いて」



「ああもういいよ!
じゃあ血でもなんでもやれよ!!」

一発頭を殴った優はどんどん先に進んでいく。

その足取りからは怒りを感じる。

「んで家畜みてーにブヒブヒモーモー言ってろ!!」

焦ったような、傷付いたような顔をするミカ。


「あ…お金もらったら優ちゃんやルカにも何か買ってあげるよ〜。何がいい?」

「いらねぇよ!!」

怒った優の足を止める手立てなどなく、見送るしかない。

その背中を見つめるミカはどこか寂しそうだった。



((お互い譲れないものがある))
== == == == == == == == == ==
「(ミカより先にルカ見つけてやるんだ!)」
「(あー、何かまた頭の悪いこと考えてるよ、アレ)」
「(どっから探すか……)」
「(取り敢えず今の優ちゃんには何言ってもムダか…)」
「(よし!いつもんトコ探してみっか)」
「(ルカ探そ。広場から行ってみよっと)」


|



TOP