動き始めるカゲ == == == == == 「もうすぐ東京に到着します」 月が煌々と輝く夜。 吸血鬼を乗せた航空機が空を飛んでいた。 「池袋・新宿・渋谷近辺では帝鬼軍からの攻撃がある可能性があります。気を付けてください」 レーネやラクスの姿がある。 「……」 「だってさ、ミカ」 そしてミカの姿も。 「まずは新宿か…」 「見てよ、ルカちゃん。 夜景綺麗だよ」 そう言われると見たくなる。 なんせ滅多に見れない外の世界だ。 「……、」 孤児院にいた自分には無縁の光景。 こんな高い場所から町を見下ろすことなどなかったはずだ。 「どうです?」 「…きれー……」 窓にくっついているとフェリドの頭を撫でられた。 「うん、素直でよろしい。 あ、ルカちゃん本読む?」 突然話が変わるのはいつものこと。 そして自分が何と答えようと彼の行動に違いはない。 フェリドの膝に座らさせるルカ。 本が開かれる。 「ちゃんと読めます?」 「…貴方が字を教えてくれたおかげで」 「"貴方"…?」 「……フェリド」 すると満足そうに笑う。 仲良くなったら過去を教える。 そのために始めさせられたのが名前で呼ぶこと。 あとは彼の遊びに付き合うこと。 フェリドの所業を許したわけではない。 でも変わらない現状に、いつまでも意地を張っているばかりではいけないと思った。 それに、拒絶し続けるのも意外と疲れる。 ルカ自身、少しフェリドに歩み寄ったつもりだ。 フェリドはルカに無理強いをしてくるわけではない。 読み書きを教えてくれるし、食事も与えてくれる。 遊んでいると楽しいと思うことさえある。 まあ、血を吸われたり吸血行為を見るのは嫌だが。 「あれぇ、酔っちゃった?」 口元を押さえていると覗き込まれた。 フェリドは意外と人を見ている。 だから少しの変化にも目敏く気が付く。 「……ちょっとだけ…」 「休んでててもいいですよ〜?」 こうして妙に優しかったりする。 「じゃあ…」 お言葉に甘えて休むことにする。 自分の席…フェリドの前の席に戻ろうとする。 …が、手首を掴まれてしまう。 「?」 「ここで休んじゃってください」 ……彼はやっぱりよく分からない。 「僕もちょっと休むから。 ルカちゃんはほら、安眠枕的な?」 ((吸血鬼に睡眠って不要だったはずじゃ…?)) == == == == == == == == == == 「何なら膝枕してあげようか?」 「いらないから…」 「えぇ〜、遠慮しなくていいんですよ?」 「ぇ、いや…」 「じゃあルカちゃんが膝枕してよ」 「……私の足、壊死するから」 「ひどいなぁ、僕の頭そんなに重くないですよぉ」 ← | |