結ばれたケイヤク
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以前と同じ、真っ白な世界。

ただ、1つ違うのは……家族の死体が転がっていること。



「やあ優ちゃん」



来た。

『僕ら(私たち)を見捨てて逃げ出した優ちゃん』

ミカとルカ。

「気安く名前呼ぶんじゃねぇよ。
てめぇが鬼なんだろ?」

既に経験済みの優は冷静に対処する。

「あれ、君の一番弱い場所に触れてるつもりなんだけど」

「まるで動揺しないね。不思議、なぜかな?」

「てめぇら鬼のやり口は分かってんだ。
いいからあきらめて俺に力をよこせ」


ミカの口から黒い靄が出てくる。

グラッ

「ミ…!」

倒れたミカに駆け寄ろうとする。
だが、ミカから出た黒い靄が襲ってくる。

「ぐぅっ!!」

腹を貫かれる。





「あー、なるほど。君は1度"鬼"に触れてるのか。

でも下位の"明王"に触れたくらいで僕に勝つつもり?
君程度の心など、どうとでもいじれるのに…」





瞳を浮かび上がらせた靄は不気味な雰囲気を纏っている。

「いいから俺に力を寄越せっつってんだ」

てめぇの力は俺のもんだ、と何とも横暴なことを言う。

「ふむ、でもなぜそんなに力を求める?
復讐のためかい?」

「そうだ!!」

「大切なものを失ったから?」

白い世界に転がる家族の死体を見て肯定する。

「初めてできた家族を喪った」

それは辛かったねぇ、と本気かどうか分からない同情をする。




「いいよ、力を貸そう。
僕は強い子が好きだ、強い欲望が好きだ」




復讐のためだけに力を欲するなら、無限にやれると鬼は言う。

「じゃあ…」

「でもまだまだ足りないよ優ちゃん」
倒れたミカが優を見ている。

「復讐のためだけに生きてくれないと力はあげられない」
茜もいる。

「だから愛を捨ててよ」
ルカまでそんなことを言う。

「僕らはそれが1番苦手なんだ」

欲望は好き、でも愛は嫌い。


「与一?君月?シノア?仲間?何それ?
優ちゃんだけ友達作って幸せになるつもりなの?」


優は返す言葉に戸惑う。

「優くんだけ生き残ってそんなのずるいよ」

「僕らはもう死…」





「あああくそ、てめぇらガタガタうるせぇぇええ!!!
いいから俺に力を寄越せ!!

俺は…俺には……全部を守るだけの力がいるんだよ!!」





優が輝きを帯びる、黒い靄が消える。

「ーー!!」

優は地面に落とされる。

「お〜お〜。
愛と欲望が絡み合ったすごい矛盾」

鬼は感心しているようだ。



「これだから人間は世界を壊す」



「…………」

「いいだろう、気に入った。
君の心が強い限り従ってやる」

ほんとか!!?と嬉し気な優。

「だが一瞬でも心が弱いと思ったら君の体を頂くよ」

それでもいいかと問われ問題ないと簡単に答える。






「なら君に従おう。

僕の名は阿朱羅丸。
力が欲しい時は名前を呼んでくれ」






優は教えられた名前を復唱する。

「お〜、あともう1つ」

主となった優に情報をくれるらしい。

「君ね、少し妙なものが混じってるよ。
すでに1割くらい人間じゃない」

「は?」

「もしかして人間どもに何か良からぬ改造されてるんじゃない?」

「そりゃ一体……」



「人間を信じるなよ、優。
人間は吸血鬼よりも、鬼よりも怖いよ」



人間の優に言うのも妙な話だ。

「ちょ、だから一体お前は何の話を…」

「じゃあこれで契約は完了した」

一方的に話を切る。
すると黒い靄から人影が見え始める。

「僕は君の力となろう、刀となろう」

目を開けと言う。







「君の強い欲望を膨張させて世界を切り開いて見せろ。

ーー百夜優一郎!!」




((鬼からの警告))
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「お、うまくいったか?」
「はっ、当たり前だろ」
「余裕こいてんじゃねぇよ。調伏に時間かかりやがって」
「お前も成功したのか」
「当然だ」
「で与一は…?」


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