立ちはだかるキゾク
== == == == ==


「みなさんとりあえず臨戦態勢であらゆる状況に対応できるようにしてください」

君月を運転手とし、優を助手席に乗せている。

シノアと三葉に挟まれ気まずそうな与一。

「次の角を曲がったら新宿の防衛壁が見えるはずだ」

そして曲がった。


そこに見えたのは幾つも上がる黒煙。



「あれは…新宿が襲われてる…!?」



優が窓から身を乗り出して見る。

「!!」
「うわっ!!なんだ!?」

前方に人影を見つける。





「あの服……吸血鬼の…貴族だ!!」





優は君月に止まるなと言う。
轢いてしまうように。

それに従ってアクセルを踏み込む。

吸血鬼まで数メートルまで迫った時…。


バンッ

5人は車から飛び出した。
車はそのまま吸血鬼に向かっていく。

「はっ」

赤髪の吸血鬼は手を伸ばした。


ドカッ


片手でそれを止めてしまう。

車は衝撃でフロントが潰れる。

「このっ」

与一は飛び出した体勢のまま、弓を構える。
地面すれすれで、矢を放つ。






「ーー剣よ、私の血を吸いなさい」






吸血鬼の貴族は剣に手を掛ける。

すると柄から出た棘が手を貫く。

刀身が赤く染まった剣を一振り。
与一の放った矢は簡単に弾かれてしまった。

「うそっ!」


ドッ

それどころか反撃までしてきた。

真っ直ぐ与一に向かって地面が抉れていく。

攻撃のため受け身を取れなかった与一。
すぐに動くことができない。

「与一!!」

優より早く、シノアと三葉がカバーに入る。

キキィン

「これは…まずい。
みなさん独断で動かないで!!」

鬼呪装備で受けた斬撃の重さに敵の力量を理解する。





「相手は一級武装した吸血鬼です!!
今までの相手とは…!!

え」





指示をしている間に敵はすでに背後に迫っていた。

君月がシノアを庇って間に入る。

ドッ
刃が交わるより先に吸血鬼の腕が飛ぶ。

優の攻撃によるものだった。


「おっと…」


赤髪の吸血鬼は余裕の表情で距離をとった。

腕を失いながらも笑みを浮かべている。

「へぇ〜、人間のわりにはやるねぇ。
何者なのかな」

敵である優たちに話しかける余裕まである。

「(…なるほど、状況が見えましたね)」

冷静さを取り戻したシノアが作戦を練る。


「(1対1でもすぐには殺されない優さん・君月さんを前衛に、私・みっちゃん・与一さんで援護しながらあの吸血鬼を始末……)」





ダンッ


上空から降りてきた2人の吸血鬼。
そのどちらもが貴族。




((浮かんだ笑みは禍々しく))
== == == == == == == == == ==
「くそ…(一気に状況が変わった…)」
「……どうする?また撤退か?」
「逃げられるならそうしたいですが…。
あのレベルが3人もいては無理でしょう。
だから戦います、鬼が暴走するかもしれないくらいのぎりぎりの全力で」


|



TOP