明日
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「ーーか、……殿下」




呼び掛けに瞼を上げると、レイシーが心配そうに覗き込んでいた。

「……レイシー?」

ぱっと安堵した表情に変わる。


「お目覚めにならないので心配しました。
お疲れになるなら夜は早くお休みください」



レイシーのことを考えていて寝坊しかけるとは。

まるで子供みたいだと自嘲する。

「殿下…?」

まだ起き上がらないことに再び心配そうな顔をする。

「あぁすまない」

起きてローブを着せてもらい、鏡の前に座る。


「今日はどうなされたんですか?
お加減が悪いとか?」

長年の経験でシュナイゼルの体調を察するレイシーが珍しく聞いてきた。

「いや、そうではないんだ」










君の事を考えていたら眠れなかったんだ








そんなことを口走ってしまいそうになる。


髪を整えてくれる白い手。
今ではその手を取ることも簡単ではない。

頬にキスをすることも、共に昼寝をすることも。


やろうと思えばできないことではない。



だが、それをしてしまえばレイシーがどこか遠くへ逃げてしまう気がした。




レイシーが自分に好意を抱いていない時にすべきことではない。

もう子供ではないのだから。


「本当に、君の母君は厳しい人だよ……」

「何がです?」

「いや、何でもないよ…」

昨晩のバトラーの言葉が甦る。


「(不器用か……)」




















世の男性はどのように、愛する人をパートナーとしてきたのだろう。



その完全正答があるなら教えて欲しい。

でないと私は、愛しい人を傍に置きながらいつまでもその手を引くことができない。

そしていつか、彼女が誰か別の男のものになるのを見なければいけなくなってしまう。



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「暫く夜はお控えください」
「……分かったよ、もう止めよう」
「え?いえ、別にそこまでは言っておりません」
「いや、いいんだ」

私の欲しい者は1人だけだから


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