夜2
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自分を迎えに来たバトラーを見て眉をひそめるシュナイゼル。





「……レイシーは?」





普段であれば数名のバトラーと共に見えるのだが、今日は女性を連れていったメイドの方にもいなかった。

「メイド長は他の仕事がありまして」

いつも少しの遅れもないレイシーに意外に思う。


「最近は悩み多き年頃のようですから」

手早く身を清めローブをかけてくるベテランのバトラーたちは、レイシーがいないためか微笑ましげに語る。


「レイシーがかい?」

それこそ初耳だ。

いつも傍にいるが、悩みを感じたことはなかった。



「殿下が夜毎に別の女性をお連れになるのが悩みの種のようで」

「慣れたことだろう?今さら…。
それにレイシーの鈍さに問題があるんだよ」










「えぇ、殿下が毎日あのようにアピールされているのに。

ですが、殿下ももう少し上手くせねば、レイシー殿の守りは堅いですよ」





長年仕えているバトラーの言葉に苦笑する。

「君たちにはこうも見透かされているのにね」

「殿下も不器用すぎです、レイシー殿に対して。
一日をレイシー殿で始めて終わっても、メイド長からすれば当然程度の認識なのですから」

手厳しいね、といいながら寝室に向かう。


「折角先代のメイド長も折れたのですから」

「お2人の言い合いには誰も口を挟めませんでしたからね」
















シュナイゼルはかつて、乳母でありメイド長をしていたレイシーの母に言った。


『レイシーと結婚させてください』



秒で却下されたが、それからが2人の戦いだった。


見習い兼遊び相手として傍に置かれていたレイシーと親しくなった。

母親に厳しく指導されて落ち込んでいるレイシーを慰めた。

自分に仕えるようになったレイシーに、毎日のように愛の言葉を贈り、遠回しにだがそのような行動を心がけた。


そしてレイシーがメイド長を継ぐ時、ついに彼女の母親は折れた。

『殿下のお気持ちは痛い程、分かりました』

だが、最後に最難関の試練を置いていった。





『ではレイシーが殿下に愛を誓う日が来れば、認めましょう』





貴族と皇族。

本人の意思なんて関係なしに親を納得させれば叶うと思っていたのが甘かったらしい。


そこからがとても長かった。

仕える側の人間となったレイシーは、かつてのような気安さはなく、向けてくれるのは忠誠と親愛の情。

どんな甘い言葉も、レイシーはさらりと流してしまう。

職を辞した先代メイド長に1度だけ会ったが、勝ち誇ったような顔をしていた。

彼女の計画にまんまとはまってしまったらしい。


レイシーの気を引こうと女性の影を見せてもまったくの無反応。

直接的に伝えるのも自分らしくなくて、完全に停滞していた




















「それでは殿下、おやすみなさいませ」



明日も大量の仕事が待っているためベッドに入る。

だが、女性を抱いた後だというのに悶々としていた。


その日、レイシーへの想いに頭の中を占領されながら眠りについた。



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『レイシーと結婚させてください』
『なりません殿下』
『何故ですか?愛が足りないのですか?』
『そういう問題ではありません』
『ではどんな?私はレイシーに見合う男になります』
『レイシーはいずれ殿下仕える者。私が許しません』


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