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夜遅くに宮殿に戻ったシュナイゼル。



そこから食事や湯あみなどを準備するのは主に男の使用人だ。

いくら皇宮仕えのメイドで口が固いと言っても、夜の方を知りたがる者は多い。

そのため夜も残っている女性使用人は、使用人を取り仕切るレイシーと、主が連れ込んだ女性の世話をするベテランくらいだ。




今日も今日とて女性を連れ立って戻ってきた主。



共に食事をしている間に、すべての部屋に必要そうなものを揃えておく。

どの部屋もシュナイゼルの部屋ではあるが、彼はいつも同じ部屋で寝起きする。

そしてその部屋にだけは女性を連れ込むことはない。





「では彼女を頼んだよ」



見るからにお嬢様であるとわかるその女性。

緊張しているらしい彼女を大ベテランの使用人に預ける。

若い女使用人がいては一気に現実に戻されるであろうから姿を見せぬように。


そしてレイシーは数名のバトラーと共に、シュナイゼルが適当に入った部屋で"就寝前"のお手伝いをする。
この時もあまり若い者は入れない。

心から彼に忠誠を誓っているベテランばかりだ。





「それでは殿下、私どもは下がらせていただきます」




それが形ばかりの終業の挨拶で、暫くすれば呼び鈴がなるのはわかっている。


使用人が集まる大部屋に戻り、女性を送り届けたメイドが戻ってくる。

空いた時間に帳簿をつけたり、明日の支度をする。


「はぁ……」


「悩み事ですかな?」
「ならきっと殿下のことだね」

溜め息ひとつで察してくる大ベテランたち。




「悩みと言うよりは少し呆れているだけですよ」



仕事をしているシュナイゼルは心から尊敬する。

だがこうして夜毎に違う女性を連れ込む点にはほとほと呆れている。

男性皇族たるもの、愛のない女性関係はいくつあってもおかしくはないが、流石に多すぎである。


「こう使い捨てのように女性を扱って、いつか刺されるんじゃないかと心配で」








「ははは、殿下はああ見えて不器用でいらっしゃるから」







「……はい?不器用?」

どう解釈すればそんな返答が来るのか。

しかも何でもそつなくこなすシュナイゼルに不器用とは、的はずれもいいところではないか。



その時、呼び鈴が鳴った。

どうやら事が終わったようだ。

レイシーはメイドたちに女性、バトラーたちにシュナイゼルを任せた。



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「母は殿下にどんな風に接していたんですか?」
「それはもう愛のある厳しさで熱心に」
「先代のメイド長は自分にも使用人にも厳しい方でね」
「殿下を見ているとそんな風にはまったく…」
「君の母上も殿下の女性関係には手を焼いていたよ」
「やっぱり…」
「あぁだが、レイシー殿が思っているのとは違う理由でだがね」


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