明日へ
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「殿下……どうして…」


ルルーシュが立ち去り、兵の拘束も解かれたカノン。

目の前の光景が嘘であればと願った。

いつかは訪れると分かっていた旧友の死が、それを引き延ばし続けた主君の手により……。


力の抜けたレイシーを抱き、その乱れた髪を撫でる主君に問う。



「レイシーは…とても安らかな顔をしている」





ある時から、口にする感情と表情が噛み合いきらなくなったシュナイゼル。その理由ははっきりしている。

そんな彼が、今までで一番ひどい顔をしている。





「私には分からない。

もっと早く……こうするべきだったのかもしれない。
だが……私は嬉しいんだ。


レイシーの最期の言葉が」



自分だけが必要としていたのではない。

それだけがシュナイゼルの心を慰めていた。




















ゼロレクイエム。
たった2人の少年の覚悟と"死"により、世界は動き始めた。


世界は明日に向けてまとまり始めた。

シュナイゼルもまた、その歯車の一部として、その才能を発揮していた。


皇族という存在から解放されながらもその存在は大きく、与えられた屋敷には常に警護の者がいた。

他の生き残った皇族にはあまり近付かないよう言われている。

かつての部下も今では様々な役に就き散り散り。



どんな生活を強いられても、シュナイゼルは満足だった。







レイシーを、その墓を自分の側に置くことができたから。







自分の役目をさっさと遂げ、早々に自分の元に戻ってきたカノン。

そんな彼に呆れながらも、レイシーが喜ぶよと屋敷にあげる。

昔は喧嘩ばかりしていた2人だが、その頃からカノンがレイシーを気に入ってのことだと気付いていた。


そしてカノンのように戻ってきた騎士ギルフォードを従えたコーネリアが訪れた。

流石に銃撃したことを根に持っているようで、墓前で毒づかれた。

だが理解が足りなかったとの自負からか、撃ち返されることもなかった。

あまり接触されてはと進言され帰路につくのだが、それでも時たまここへやってくる。報告と、レイシーの墓に挨拶しに。





「レイシーと生きたかったよ、この世界を」


正直な言葉だった。

あの時、手にかけなくても今日まで生きることはできなかったであろうレイシー。

シュナイゼルは過去、レイシーの死から前に進むためにも墓を建てたのだが、結局毎日のように訪れていた。


「それも無理か…」


カノンが側にいることでさえあまりいい顔をされないのだから。

シュナイゼルを主君とする武人のレイシーが共にいることは難しいだろう。




「君と作った平和ではないけれど、これも一つの平和だ。
だからどうか見ていてほしい」




















「首席補佐官ったら女々しくもまだレイシーの写真持ち歩いてるのよ?あ、首席補佐官っていうのはシュナイゼル様のことよ。
新婚の旦那が大事もったいなく持ってる指輪じゃないんだから」

いつのまにかなくなっていた写真を持っているカノン。


「未だにそなたが居ればと口うるさいのだ兄上は…。
よく毎日側にいてくれたよレイシーは。
私はてっきり、兄上は妻に欲っしているものと思っていたよ」

「シュナイゼル兄様ったら、レイシーさんのお墓の掃除してて遅刻するところだったんですよ。
最近全然、時間に余裕をもって行動してくださらないんです。
命日のお休みも、前後2日欲しいって……困ったお兄様でしょう?」

腹違いの妹、コーネリアとナナリーが顔を見合わせて頷いている。



遠巻きに眺めているギルフォードやゼロも3人の言葉に同意するように相槌を打つばかり。

レイシーの墓前で言いたい放題言う3人に頭を抱える。




「それくらいにしてくれないか?君たち。
私が死んだ時、レイシーに怒られてしまうよ」










「殿下は昔っからレイシーに甘やかされて……。
えぇ怒られてください、存分に。
レイシーは怒るととっても怖いですから」


昔、散々喧嘩したカノンの言葉はリアルだ。

だが甘やかされたつもりはない、普通だ。



「私たちが言っても改められないではありませんか。
全く……女性を口説いてばかりいらっしゃったのに、レイシー相手だと言うべきことを言われないのですから。」


レイシーとは主従でそういう間柄では……。

いや、そういう生活も良いとは思ったんだが、レイシーにその気はないだろうから……。



「お兄様ったら、そんなに早くレイシーさんのところに行けるわけないではありませんか。
私たちのしたことを思えば、100歳まで世界のために尽くしても償いきれませんわ」


……厳しいことを言うねナナリー。

そんな歳までレイシーの優しさ無しで生きるなんて、考えられないよ。





「……ルルーシュは余計なことをしてくれたよ。
レイシーと逝けていたらどんなに幸せだったか…」



「「「本当にレイシー(さん)に怒ってもらいましょう」」」





((君がいなくても))
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「こんな世界で暗殺を待たないといけないなんてね」
「待たないで下さい、でん……シュナイゼル様」
「私がいなくても世界はまとまっただろうに」
「より早く強固な体制を作るために必要です、兄上の手腕が」
「はぁ……」
「ゼロ、お兄様がおかしなことをしようとしたら遠慮なく命令してください」

「……どうして私の周りはこう厳しい者ばかり……」
「「「だから甘やかされすぎです」」」


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