![]() == == == == == 「レイシー、これが今の世界だよ」 シュナイゼルはレイシーを様々な場所に連れ出した。 ブリタニア国内から紛争地まで、世界に蔓延る問題を包み隠さず見せた。 今のレイシーがそれを理解できるのかは分からないが、これがかつて理想を共にしたシュナイゼルの誠意だった。 そして今、天空要塞ダモクレスの中心にいた。 「レイシーならっ、レイシーが健在であればこんな手段は同意しなかった!兄上っ、今一度考え直しを………レイシーのためにも!」 ダモクレスによる恐怖支配を語ったシュナイゼル。 側にあるベッドに眠るレイシーの頬を撫でる。その視線は慈愛と悲哀に満ちていて、誰が帝都を親族や臣民ごと消失させたと思うだろう 反発したコーネリアは2人の強い絆を知っているからこそ、そう諭した。 「(レイシーがああなって兄上は変わられた)」 彼の宮殿で2人が語り合っている姿は昨日のことのように思い出せる。 あの頃の笑顔は本物だった。 「(兄上にはレイシーが必要だった。 一個人として、人らしくあるためには)」 「違うよコーネリア。 私はレイシーに平和な世界を見せなければならない。 そのためには必要なことだよ。 ……レイシーに残された時間はそう長くはないから」 コーネリアは奥歯を噛み締めた。 この兄はもう何を言っても止まらないだろうと確信した。 父でありより強い立場にあった皇帝もルルーシュに討たれ、レイシーも今では目を覚ますことすら珍しくなってしまった。止められる人がもういない。 「(ならば…!)」 銃剣を抜いた。 もう実力行使でしか止められない。 しかし、シュナイゼルに向かって行こうと動いた瞬間、足に熱い衝撃が走る。 銃撃されたのだと気付く頃には、床に倒れていた。 「……、…?」 音に反応してか、レイシーの瞼が微かに上がる。 それに気付いたシュナイゼルは、コーネリアを隠すように立った。 「大丈夫だよレイシー。 もう少しで、君に平和な世界を見せられる。 だから、もう少しだけ待っていてくれないか」 するとレイシーの唇が震える。 「と……も…、に」 ここ最近では珍しすぎることに、シュナイゼルは驚いた。 だがすぐに優しい笑みを浮かべて頷いた。 「そうだね。 私とレイシーで、平和な世界を」 手を握れば、レイシーの指先が丸まる。 それが懸命に握り返そうとしているのは知っている。 再び閉じる瞼に、意識が遠退いているのだろうと寂しく思う。 「(急ぐ必要があるか。 レイシーが生きている間に、必ず……)」 コーネリアをカノンに任せ、レイシーを設備を整えた部屋に戻した。 ((私一人でも)) == == == == == == == == == == 「兄上、そちらは…」 「紹介するよ。レイシー・ミリアム、コーネリアくらい腕のたつ子だよ。 昔から護衛役を務めてくれてね、今も同じ学校に通う友人だ」 「お初にお目にかかります、コーネリア殿下」 「あぁ、先の剣術大会で士官学校の者を圧倒して見せたという…」 「……それは初耳だね、レイシー?程々にしなさいといつも…」 「他にも様々な大会で優勝をさらっていったとか」 「コーネリア殿下っ、それ以上は…!」 「レイシー、少し話をしようか。そう、二人きりで」 ← | → |