June Berry - 5/9


side. S



やっとのことで、持ち帰った仕事が片付け終わり、リビングへと下りる。



「あ、翔くん、仕事終わった?」

「うん。おかげさまで。…なんか、やけに静かじゃね?」



キッチンでは、潤が黙々とランチの用意をしていた。
ダイニング・テーブルの上には、既にサラダが並んでいる。



「ああ…。だって、騒がしいヤツが騒ぎすぎて疲れた挙句、眠っちゃったからね。兄貴はいつもどおり、って言えば、いつもどおりだけど」

「なるほど…」



潤の視線の先を辿ると、4シーターのソファを占領して、雅紀が眠っている。
その先では、午前中に雅紀が磨いたウッド・デッキの上で、智くんが寝息を立てていた。
そして2人を見て、潤が“まあ、この2人には午後動いてもらうからいいけど”と言う。



「はは。なんか、2人いなくて、2人眠っただけで、こんなにも静かになんのな。この家」



言いながら自分もソファに座ると、ふとそう思った。
普段は雅紀と杏奈を筆頭に騒いでいて、それをからかうように和が突っ込むから、家の中は相当騒がしい。
それに対して、智くんは絶対にキツく注意はしないから、潤の負担は相当なものだろう。
仕事が忙しくて、なかなか家にいられない俺にとっては、本当に頼りになる存在だ。



「静かなのはいいんだけど、俺は杏奈の方が心配。あいつ、上手くやってんのかな?」

「うーん…。まあ、バレても全然良いけど、ちゃんと計画通りに事が進んでくれないと困るよなー…」

「うん。最悪、買って来るようになるかもしれないし。…その時は、翔くん急いで行って来てね?一応杏奈にも連絡するようには言ってあるし」

「まあ、いいけど…」



遅れた和の誕生日。杏奈発案の、ちょっとした計画。
別に、凄く特別、というわけではないけど、やるんだったら絶対に成功させたい。
そのために急いで仕事も終わらせたわけだし、全員が必死になって用意を進めているんだから。



「今頃、あの2人何してんだろーなー。…そういえば、行くところにランチ食べれる場所ってあるの?」

「無いと思う。でも、兄貴が店で余ったパンを杏奈に持たせてたし、大丈夫じゃない?」

「そっか」

「っし、出来た。…兄貴、雅兄ぃ、起きて!ランチ、出来た」



潤の声に、起き上がる2人。雅紀に至っては、その言葉に反応し過ぎてソファから落ちた。
そして一気に、同じはずの空間がまた賑やかになる。



「ははっ!」


「っぁ〜!…翔ちゃん、そんな笑わなくてもいーじゃんかよ!」



――― あの2人が帰ってきたら、もっと騒がしくなるんだろう。そっちの方が、“らしい”けど。






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