私のヒーロー - 8/10
side. O
夕城さんが作ったクジを、震えそうになる手で開く。 こんなに緊張する席替えは初めてだし、ここまで何かを強く望むのは、なんだか俺らしくないな、と思う。 でも、あの時のような想いをするぐらいだったら、俺らしくなくてもいいから、また夕城さんの隣に居たかった。
「11番か…」
あの日、靴を隠され泣いている夕城さんを見た時、凄く嫌な気分になったのを覚えてる。 好きな女の子が泣いている、っていうのもあるけど、その前日の夜に、翔くんから電話があったことが一番の原因だった。
“杏奈が、もしかしたら嫌がらせされてるかも知れないんだ” “杏奈は強がりだから、何かあったら智くんが護ってやってよ” “智くんなら、杏奈も素直に受け入れると思うし”
「翔くん…」
翔くんには、一度夕城さんへの気持ちを話したことがあった。 嫌がらせの原因が、翔くんのせいか俺のせいかは分からない。でも、俺の気持ちを知っている翔くんだから、夕城さんを“護って欲しい”って、そう言ったのに。 ずっと隣にいたはずだったのに、夕城さんが嫌な想いをしているなんて知る由も無かった。 結局泣かせる羽目になって、護ることも出来なくて、夕城さんにも翔くんにも、凄く申し訳ないことをしたと思う。
「どこだ、俺の席…?」
だからこそもう一度、夕城さんの隣でやり直したいんだ。もう絶対に迷惑なんてかけない。 それで全てが帳消しになるとは思っていないけど、こんな俺じゃ、夕城さんに気持ちを伝える資格は、今は無いと思うから。
今度こそ、ちゃんと君を護りたいんだ。
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