私のヒーロー - 5/10


side. O



家から学校までの距離は、歩いて約20分くらい。その距離を、たっぷり倍の約40分をかけて、ようやく学校の門をくぐった。
ずっと眺めながら歩いてきたのは真っ青な空で、雲もゆっくりと動いている。



「今日も良い天気だなぁ〜…。また屋上に行って、また夕城さんに迎えに来てもらおうかな…んふふふ」



夕城さんはクラス委員長で、俺の隣の席の女の子。凄く凛としていて、男の俺が見てもカッコイイと思う、そんな子だ。
こうやって空を眺めていると思い浮かぶのは夕城さんで、それだけで笑顔になってしまう。


初めて会ったのは、今のクラスになってから。でも、目にしたのは去年で、同じクラスになった翔くんがきっかけだ。
時々、“しょーう!”と呼んで教室に来る夕城さんは凄くハキハキしていて、翔くんと同じような、真っ直ぐした瞳が印象的だった。
そして今年、同じクラスになって、隣の席になって、それまで以上の色んな夕城さんの姿が見えてきた。
みんなが嫌がるクラス委員長も係りも進んでやって、友達にも優しくて、笑顔が可愛くて、授業も真面目に受けていて、とにかく常に一生懸命な、そんな夕城さんの姿が。



「んふ…。今日も夕城さんに会えるなんて、嬉しいなぁ〜」



気付いたら、凄くいいなぁ、と思うようになってたし、夕城さんのことが凄く好きになってた。
それで、ついつい構って欲しくなって、欲張りになって、わざと教科書忘れてみたり、授業から抜け出そうとしてみたりする。
夕城さんが迷惑してるのも分かってはいるんだけど、怒ってる顔も可愛かったし、何より俺みたいなヤツの為に一生懸命になってくれるのが、めちゃくちゃ嬉しかった。


本当に良い子なんだなぁ、と心から信頼出来る感じが、凄く。



「あれ…?夕城さん?」



そんなことを考えていると、昇降口の周りで困ったように、うろうろ歩く人が見えた。
それは正しく、今考えていた夕城さん本人で、他には誰もいない。もう朝のSHRが始まっている時間なはずなのに、夕城さんだけがそこにいるのは、なんだか妙なことだった。



「夕城さん…?」

『…! 、…大野…』

「どうしたの…?」



そんな様子を見て、気付いたら夕城さんの側まで駆け寄り、声をかけていた。そうすることしか、出来なかった。

だって、夕城さんが今にも泣きそうな顔をしていて、それが凄く辛かったから。






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