私のヒーロー - 2/10
次の授業で使う、黒板に取り付けるプロジェクター。 ただでさえ重くて、なんでこんなのを、私がクラス委員だからといって運ばなくちゃいけないのか!、とイライラしているのに、更にイライラするようなことが起きているのが、教室に戻った瞬間、すぐに分かった。
『また……!』
一体、何度注意したか分からない。というか、ここまでくると嫌がらせでやっているのかも知れない、と思うレベル。 もしかしたら、“ヤツ”は私のことをバカにしているのかも知れない。
『っ、相葉!大野はどこに行った?知らない?』
「えっ!?わ、分かんない。俺、ニノと喋ってたし…」
ちょうど近くにいて、大野と仲が良いクラスメイトの相葉雅紀に尋ねると、そんな答えが返ってくる。でも、私の怒りのオーラが見えるのか、どこか弱腰だ。 そして、その相葉雅紀が一緒に喋っていたという相手、二宮和也が傍観するように笑い、仕舞いには他人事のようにこう言う。
「んふふふ。いつも忙しそうですこと、クラス委員長」
『好きで忙しくしてるワケじゃないんだけど…』
“ヤツ”に言いたいことは、たくさんある。
学校はサボるな、授業中は寝るな、学校の備品に落書きするな。その他、諸々。 そして、特に一番言いたいのは、“クラス委員の私に迷惑をかけるな!”ということ。 そうすれば、朝のSHRが終わって数分後に、私が校舎中を駆けずり回って体力を消費する、なんてことにはならないで済む。 でも結局、覚悟を決めて教室を飛び出した私は、二宮和也が言う通りいつものことであり、もはやパターン化したお決まりごとだった。
『あんにゃろう…』
席替えで隣の席になった、大野智。 幼なじみの翔から何度か名前や話は聞いていたけど、隣の席になったことで、きっと私は翔以上に大野と関わることが増えたに違いない。 しかも、残念なことに翔からは、大野智が気まぐれに学校や授業をサボる常習犯だということは聞いていなかった。
『っ、早く連れ戻さないと…!』
時計を見ると、授業開始まで残り10分も無い。
きっと、これが大野じゃなかったら、私だけじゃなく、誰も気にしないだろう。 具合が悪くて保健室に行ったのかも知れないし、教科書を忘れて他のクラスへ借りに行っているのかもしれないから。 でも、今まで何度も繰り返したように、私が怒りながら探してるのは、間違いなく隣の席のヤツであり、大野智なのだ。 これ以上、クラス委員で隣の席だからといって、大野の行動のとばっちりを受けるのはゴメンだ。早く探さないと。
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