始まりを告げる君の声 - 5/8


side. A



予鈴が鳴る少し前、教室に着いた時には既にみんなは席に着いていて、夕城さんもいつも通り、自分の腕を枕にして眠っていた。
お昼にこの教室を出た時と、何も変わっていないクラスの様子にがっかりしながら、俺もニノと一緒に静かに席に着く。



「相葉さん、次は英語なんだから、ちゃんと教科書出しなさいよ。また怒られるよ?」

「え?ああ、はいはいはい。英語ね。つーか、ニノだって隠れてゲームやってんじゃん!」

「俺は見つかる様なドジ踏まないし、指されてもちゃんと答えられますから。あなたと違って」

「ちょっ、…酷くない?それ。ひゃひゃひゃ」



そんな風に和やかに会話をしつつも、頭の中では隣に座る夕城さんのことを考えてる。
授業が始まってからもずっとそんな調子で、いつものことと言えばいつものことだけど、先生の声も賑やかなクラスメイトの声も聞こえなくなって、終始、上の空状態だ。



――― どうすれば、夕城さんと仲良くなれるんだろう。



バスケ部での自分を見てもらったり、一緒に昼飯食べたりすれば、少しは何か変わるかな?
でも、これまで幾ら声をかけても進展していないのを考えると、そういうことじゃないのかも知れない。
しつこくしすぎると敬遠されるし、距離を置きすぎれば、もっと孤立して離れて行っちゃう。



「う〜ん…。難しいよなぁ〜…」

『…?…』



考えれば考えるほど、迷宮入りしていくような感覚。
こんなの初めてで、このまま1年、仲良くなれなかったらどうすればいいんだろう、と思う。


せっかく同じクラスになって、せっかく隣同士になって。なのに、このまま何も思い出が出来ないのは寂しすぎる。
クラスのみんなも、あからさまに夕城さんを避けたりしてるせいか、誤解も解けない。
リーダーが言うように、きっと凄く優しい子なのに。



「じゃあ、次の英文を…。そうだなー、誰かに訳してもらおうかな。この前は誰までいったんだっけかな…」



そんなのは悲しすぎるし、絶対に嫌だ。
だから、俺は意地でも仲良くなって、夕城さんと楽しい思い出を作るんだ、って決めた。
そうじゃなきゃ勿体ない。人生は一度っきりで、出会いも一度っきりなんだから。



「えーと…、じゃあ今日は…、」

「……あーばさん?」



そのためには、どうすればいいんだろう。結局、今まで通りに、ウザイと思われても声をかけるしかないのかな?
それとも地道にリサーチをしていって、確実に興味を持ってくれるようなことを提供出来るまで、待った方がいいのかな?
でも、そんなことしてたら時間を無駄にするだけな気も……、



「相葉!」

「え?」

「今日はお前だ。ここ、訳してみろ」

「え?訳…?…って、へえっ?!」

「バカ…。だから、言ったのに…」

『………』



――― 何これ?!いつの間に、こんなことになってたの?!






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