始まりを告げる君の声 - 4/8
side. A
リーダーの意外すぎる一言に全員が目を合わせ、動きを止める。それなのに当の本人は、そのまま持っていたパンを食べ続けていた。 空気を読んだのか、俺ら全員を代表して、翔ちゃんがリーダーに訊く。
「智くん…、“杏奈”って?知り合いなの?もしかして」
「? 、うん。家、近所で幼なじみ」
「ええっ、マジで?!」
名前を呼び捨てで呼んだ時から、なんとなくは分かっていたけど、やっぱり驚いてしまう。だって、今までそんなこと一度も聞いたこと無かったから。 でも、いつも眠そうにしている感じや、きっかけがないと自ら話してくれない感じは、リーダーと夕城さん、凄く似ていて。 さっき、マツジュンとそっくり!なんて言ったけど、この繋がりを知ってしまうと、もうそんな風には思えなかった。
「うわー、本当に?おじさん、なんで今まで言わなかったのよ。こんな話題に出されてるのに」
「ははは!確かに!」
「だって、俺の知ってる杏奈じゃねーかも知れないじゃねーか」
「いや、話聞いてれば、ある程度は分かるでしょ。普通。つーか、リーダーに幼なじみの女の子なんていたんだね。超びっくりした、俺」
俺だけじゃなく、ニノ達も同じように驚きを口にするけど、今はそんなことを言ってる場合じゃない。 せっかく夕城さんと仲良くなれるかもしれない、希望の光を見つけたんだから、チャンスは活かさなくちゃ!
「ね、ねえ、リーダー!俺、どうやったら仲良くなれると思う?幼なじみなんだから、夕城さんの好きな物とか、そういうの知ってるんじゃないの?!教えてよ!」
「ええ〜?んなこと、いきなり訊かれても分かんねーよ、俺」
「お前、それでも幼なじみかよ!」
「はははは!もはや名ばかりじゃん、智くん」
「使えねー…」
頼りない答えに、思わず突っ込むニノ達。 うっせーな!とリーダーも小さい声で返し、顔をしかめて色々考える。
「あっ…!」
「! 、何?リーダー、なんか思い出した?!」
「梨。それに、巨峰」
「…は?」
「杏奈の大好物!」
「…どっちも季節じゃね〜…!」
「ひゃひゃひゃ!ちょーどや顔、リーダー!!」
「ははは!良い顔してたね?今」
的外れで、なのにマイペースすぎる言葉と表情に、翔ちゃんとバカ笑いする。その脇では、ニノとマツジュンが呆れてため息を吐いていた。 そして、そんな全員の様子を見て、俺はなんだかもう、悩んでいたのがバカらしくなってきてしまう。
だって、みんなが俺の為に一緒に悩んでくれてるんだもん。
「ふふふふ…」
最初はただ茶化してばっかりのニノやマツジュンも、今は前のめりになってリーダーに色々と訊き出していたり、翔ちゃんは俺の隣で同じ様に笑ってくれる。 確かに俺が欲しい答えには辿り着かないけど、それだけで凄く嬉しかった。 俺にはこんなに優しい友達が4人もいて、凄く幸せだってこと、夕城さんにも早く知って欲しくて仕方ない。
すると、リーダーがいつものようにふにゃっと笑って、更に勇気をくれる。
「相葉ちゃん。杏奈はさ、ちょっと素直じゃないかも知れないけど、優しいヤツだから。幼なじみの俺が保障する」
「リーダー…」
「それに、相葉ちゃんだったら仲良くなれると思うよ、俺。だって、相葉ちゃんも同じくらい優しいから。んふふ…」
「…!…」
リーダーにそう言われると、本当に仲良くなれるような気がする。“たぶん”じゃなくて、“絶対”って思える。 だから、次の授業の為にカバンを手に取って立ち上がり、笑顔でこう返した。
「うん!ありがと、リーダー!俺、仲良くなれるように頑張るね!」
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