始まりを告げる君の声 - 3/8
side. A
「なんかさー…。夕城さんて、マツジュンみたいなんだよね。いっつも寝てて、なのに寝起きが悪いとことか!」
「は?どーいう意味だよ、それ!」
午前の授業が終わって、昼休み。校舎の屋上で、どこまでも続く青い空と気持ちの良い風を感じながら、また夕城さんのことを考える。 でも、何気なく口にした俺の言葉に、友達の1人であるマツジュンがジロっと睨んだ。 それを見て、“あー…こういう考えなしな俺の発言が、もしかしたら夕城さんも嫌いなのかも…”と思う。
「“夕城”…?」
「んふふふ。この人、隣の席の女の子に、色んな意味でちょっと参ってるの。励ましてやってよ、おじさんも」
「うっさいな、バカ!参ってなんかいないっつーの!ひゃひゃひゃ」
繰り返されるニノの茶化しに、俺も大声を出すけど、凄く楽しい時間。 ニノだけじゃなく、入学してからずっと仲良くしてる、マツジュンやリーダー、翔ちゃんと食べる昼飯も最高に好き。だって、大好きな仲間と食べる弁当は、それだけで美味しいから。 でも、夕城さんにはそういう存在を感じたことが無くて、やっぱり気になってしまう。
誰とも喋らずに、ずっと1人でいるなんて、寂しくないのかな?
「ははは!…つーか、夕城って…、夕城杏奈のこと?」
「! 、うん。え、何?翔ちゃん、知ってるの?え?なんで?!」
「おまっ…、落ち着けよ!つーか、知らない方がおかしいだろ!だって、すげー頭良いって有名じゃん。じゃなかったっけ?」
「あー、確かに。俺もそんなこと聞いたことあるわ。IQが180以上あるとか、無いとか」
「へえっ?!」
まさか翔ちゃんが知ってるとは思わなくて、つい勢いよく詰め寄ったけど、出された情報にびっくりしてしまう。しかも、その言葉にニノも続けたから、尚更だ。 さっきまで怒っていたはずのマツジュンも興味を持ったらしく、俺とニノに尋ねてくる。
「つーか、ニノ知ってたんなら、教えてくれてもいーじゃんかよっ!」
「え?で、何?その女が相葉ちゃんの隣の席なの?」
「そ。窓際の一番後ろの席で、いっつもグーグー寝てんのよ。授業中もずっと。それを、こいつがバカみたいに騒いで話しかけるから…」
冷たい視線と言葉で、俺を突き刺すニノ。 その言葉に、1年の時は同じクラスだった他の3人も、ああ…と同意するような声を出す。
「だ、だって…!」
でもその時、ずっとぼーっと俺たちの会話を聞いているだけだったリーダーが、不思議そうに首をかしげる。 そして、翔ちゃんやニノ以上にびっくりするような情報を、当たり前のように出してきた。
「でも別に、杏奈、嫌なヤツじゃないよ?可愛いし…」
「うん、うん!そうなんだよね!素っ気なくて、あんま笑わないけど、めちゃくちゃ可愛い……って…、え?!!」
――― あれっ?今、もしかして名前で、しかも呼び捨てで呼んだ?!なんで!?
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