始まりを告げる君の声 - 2/8
side. A
「でね、俺、今度試合に出れることになったんだー!しかもレギュラーでだよ?凄くない!?2年になったばっかなのに!」
『………』
新しい学年に進級して、初めての春。グラウンドや中庭、学校に来るまでの道には桜が綺麗に咲き、花びらが舞っていた。 自然と浮き足立っちゃうけど、俺の新しいクラスも同様だ。
「それにね、先輩にも褒められたし、ちょー嬉しかったなぁ〜。俺」
『………』
俺のクラスは早々と席替えをしたけど、みんな楽しくて、凄く良いヤツばっか。 取り巻く空気も新鮮で、俺も最高にテンション上がっちゃってる。
――― 、はずだったんだけど…。
『相葉…。うるさい』
「…っ、…ご、ごめんなさい…」
みんな、凄く良いヤツ。みんな、仲良し。でも、俺の隣の席である夕城さんという女の子とは、未だに打ち解けられないでいる。 30人もいるクラスメイトの中で、唯一まともに話していない子だ。
俺が謝ると、一瞥した後、また窓の方に顔を向けて眠りだす夕城さん。 それを見て、中途半端になってしまった会話が俺の心を切なくさせた。
「あーばさん…。あんたも隣になって、それなりに時間も経ったんだから、いい加減に学びなさいよ」
「ニノ…!で、でもさぁ〜!?」
俺の右隣には、中学から一緒で友達のニノ。 この数日間の様子を近くで見てきたからか、呆れたように、やっていたゲームを中断してまで言う。
「なんで、あんたも毎日毎日、懲りずに話かけるかなー?しかも、くだらない話ばっか…」
「ちょっ…!くだらないは余計だろって、」
「また、うるさいって怒られるんじゃない?そんな騒いでると」
「…っ、…!…」
ニノの食い気味での注意に、思わず掌で自分の口を押さえ、そっと夕城さんの様子を伺う。 顔は見えないけど、微かに動く体に眠っているんだと分かってほっとした。 すると、ニノがそんな俺を見て、からかうように笑う。
「あーあー…。どうやったら、夕城さんと仲良くなれるんだろ…」
「んふふふ。さあね?」
新しい席になってから、毎日毎日、夕城さんに話しかけてるけど、一向に距離は縮まらない。 こんなこと初めてのことで、空回りしちゃってるだけかもしれないけど、それにしてもキツい。 早く、この席と同じくらい、近付けられればいいんだけど…。
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