プロジェクトXの秘密 - 2/8
side. S
それは、約1週間前のこと。 仕事から帰って来て、実家のリビングのドアを開けた時だった。
『あ。おかえり、翔ちゃん。待ってたよ!』
「…何してんの?」
時計を見れば、夜の11時半。いつもは深夜を回ってしまうことを考えると、俺にしては早い帰宅。 でも、家を訪問するには絶対に遅い、常識はずれな時間。ましてや、それが女子だなんて。
――― ソファに座って俺を出迎えたのは、家族じゃない、幼なじみの杏奈だった。
『用があって、待たせてもらってたの。お仕事、お疲れ様!コーヒー、飲む?』
「え?あ、ああ…。ありがと」
そう言って、俺に1シーターのソファに座るよう勧め、慣れたようにコーヒーをカップに注ぎ始める。 でも、これがまたおかしいことに、元々はキッチンにあったはずのコーヒー・メーカーが、なぜか目の前のローテーブルまで移動しているのだ。 やりたい放題の様子に、思わず、ここ人の家だぞ?と注意すると、コーヒー、人に入れてもらっておいて文句言わないでくれない?と逆に注意し返された。
「はぁ…。で?用って何?」
『あ、じゃあ、早速お願いしていい?…っと、その前に、コーヒーどうぞ?』
若干呆れつつも、コーヒーを受け取り、着ていたジャケットを脱ぐ。 “用事”じゃなくて、“お願い”と、いつのまにか変換された言葉に嫌な予感がしなくもない。 いつだって、手を合わせて上目遣いで何か頼む時は、裏に何かある時だからだ。
でも、そんな俺の予想とは裏腹に、出てきた言葉は余りにもシンプルなものだった。
『…翔ちゃんさぁ、【ZERO】って録画してる?DVD持ってる?』
「は?【ZERO】?」
『【ZERO】、【NEWS ZERO】』
毎日のニュースは出来る限りチェックしたいし、自分の分も、今後の勉強のために確認したい。 だから、全部ではないけど、ある程度の分はDVDに焼いておいていた。 でも、何度も繰り返される番組名に、コーヒーを飲む手が止まってしまう。
それって、俺が出てるニュース番組のことですか? 嵐の櫻井翔さんが、キャスターとして出演しているニュース番組のことですか?
――― なんで、そんな突然?
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