誕生日は波乱の幕開け - 7/9


新しい結婚相手の候補であり、ターゲットの名は櫻井翔。記事によると、イギリスでは政治から経済まで、幅広く勉強していたらしい。
恐らく、後継者としての意識からだろうけど、そんなのは当然のことだろう。なんたって、資産の額は計り知れない。これで後継ぎがいなくちゃ、歴史あるせっかくの一流ホテルも台無しだ。



「でもさー、どうやって近づくの?こういう人って、パーティに出るにしても、かなり限られてくるんじゃない?」

『そうねー…。忙しいだろうし、そこら辺のパーティには来ないかも。基本的にあらゆる人とのにコネクションは作ってあるから、出会おうと思えば出会えるだろうけどね』

「ひゃひゃひゃ!その為だけにデートした人だっているもんね?」



少しの悪気も感じさせずに、雅紀が笑う。


より良い相手を見付けるには、より良いコネクションが必要なだけ。だから、嫌われないことが大事。
知り合うきっかけとして、楽しく食事をしながら、お互いのことを話すだけだ。その結果、コネクションとなる人が私を好きになったとしても、それは私のせいじゃない。
何よりその相手だって、私のおかげで沢山のコネクションが出来るのだ。文句なんて、絶対に言わせるもんか。



『ふふっ。でも、それじゃあ遠回りし過ぎだし、時間の無駄。既に彼を狙っているライバル達もいるだろうし、今まで通りの正攻法で行くのは、やめた方が良いかも』

「それが、お前の見解?」

『うん。付き合う前に確実に会って、彼の情報を得て活かした方が、その後動きやすいでしょ?ニノだって。それに、無いとは思うけど、声とか身長とか資産とかが、予想を下回ったら嫌じゃない!』

「んははは。一つ、全然ロマンティックじゃないの入ってたな。しかも、付き合うのは決定してんのかよ」

『当然!…ね、ニノ?だから……、』

「お!?」

「んふふふ…。ご心配なく。もうほとんど、目と鼻の先」



そう言って、カウンターの内側、シェーカーやメジャーカップ、バースプーンなどに紛れて置いてある、ノートパソコンを開く。
自分用に置いてある椅子を引き座ると、必需品であるメガネを掛け、一呼吸する。そして、すぐにキーボードの上を、ニノの指が忙しなく動き始めた。



「さっすが、ニノ〜!」

『ふふ。ありがと、ニノ』

「どーいたしまして。んふふ」



夢を実現させるのにニノが必要なのは、何も美味しいカクテルを作って、リラックスさせる為だけじゃない。私と他の女の子達との最大の違いは、魅力の有無や経験だけでは無く、情報の量。
新しいターゲットを見付け、計画を練る度に、ニノは相手の男の情報を細かく調べてくれるのだ。



――― 腕利きの、ハッカーとして。



「とりあえず、まずは秘書が管理してるだろうコンピュータに入って、この人のスケジュールを手に入れようと思うんだけど、それでいいでしょ?」

『うん、十分』

「ひゃひゃっ!てか、もう会社の方のセキュリティーは突破しちゃってんだ!?」



これが、いつものパターン。それから先の作戦だったりは相手によるけれど、相手のスケジュールが筒抜けになってしまえば、無駄な行動はしないで済む。
誰と知り合いで、どこのパーティに出席する予定で…、と分かるだけで、準備は整ったも同然。
後は私も彼のスケジュールを考慮して動けば、無理なく、難なく、出会えるってワケだ。



『ふふ、良かった。12時過ぎる前に、これからの予定がしっかり決まって』



時計を見ながら、コスモポリタンをまた一口含む。
やっぱり、このカクテルは幸せの象徴。ハッピーな予感は絶えることが無い。






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