別の世界の子 -1/4


side. N



「相葉さん、大野さん…あれ、翔ちゃんも?いや…てか、全員一緒のクラスじゃん…」



昇降口の掲示板に貼られていた新しいクラス表の紙を見て、そう呟いた。
俺の高校生活2回目の春はそんな風に始まり、同じクラスメイトとなったのは、中学の頃から何かと仲良くしていた友達4人。
出来過ぎているとも言える振り分けに、一緒に登校してきた2人が半信半疑になるのも当然だ。
でも俺はというと、同じように驚きながらも、頭の片隅では、面倒なことにならなければいいな、とぼんやり思っていた。


さっきから浴びせられるたくさんの視線は、悪い気はしないけど、ややこしいものではある。
この2人が、それを無視しているのか、気付いているのか。ちょっと、微妙なところではあるけれど。



「え、マジで?5人全員?」

「だから相葉くん、朝からあんなテンション高めの訳分かんないメール送ってきたんだ…」

「? 、翔ちゃんも何か送られて来たの?」

「うん。…“俺、みんなと友達で良かったよ!学校で待ってるね!”、ってやつ」

「一緒だ。潤くんは?」

「来てた。…ってことは、リーダーにも送ってるね、相葉くん」

「ははは!俺、教室で嬉々として待っている相葉くんが、見なくても分かんだけど!」



翔ちゃんが笑って言うように、この事実に一番喜んでいるのは相葉さんだろうし、実際嬉しそうに俺らを出迎えたのは彼だった。
俺たちの後にやって来た大野さんは、相葉さんのメールを見てないどころか、クラス表も自分の名前しか確認してこなかったらしく、全員勢揃いしているのを見て、自分たちの教室に戻らなくていいの?、と寝ぼけたことを言う始末だ。


この天然2人を見ていても分かるように、俺たちの空気は今まで通りで何も変わらない。
でも、分かるし、これから1年間の学校生活がどうなるかも、なんとなくだけど想像がつく。
じゃなきゃ、教室の中がこんなにも色めき立っているのは、何が原因なんだ、っていう話……、



「ん…?翔ちゃん、どーかした?」

「え?ああ…。いや、別に?」



いつも通りの空気を保つ俺たちだからこそ気付く、ほんの少しの違和感。
相葉さんがまたバカやって、潤くんに突っ込まれている脇で、翔ちゃんだけが一瞬、窓際の後ろの席を、目を細めて見ているのに気付き、そう声をかけた。
すぐに5人の会話に戻り、一緒になって笑い始めたけど、ふと何を見ていたのか気になって、俺も肩越しに後ろを振り返る。



――― そこには、頬杖をついて外を眺める、やたらカッコ良いヘッドホンをした女子が1人。



「…?…」



言葉は悪いけど、変なヤツだな、と思った。いや、凄いヤツ、って言った方がいいのかも知れない。


新学期1日目、新しいクラスになって1日目。
HRも始業式もまだ始まっていないけど、周りのクラスメイトが少しでも早く新しい友達を作り、このクラスに溶け込もうと努力しているっていうのに、それこそ無視するように、その女子は自ら一歩引いている。
でも、特別に無理しているわけでもなさそうだし、寂しそうにも見えない。言うならば、俺たちとは違う意味で、別の世界にいるような感じ。
一応、仲の良い友達がいるのは学校が終わるまでには分かったけど、だからと言って、他の女子のグループのように終始一緒にいるわけではなさそうだった。



「? 、ニノ、何笑ってんの?」

「んふふふ。別にー?」



――― なんだ。新しいクラスも、なかなか面白そうじゃんか。






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