運命の出会い - 7/9


side. S



子供の頃から音楽というものが身近にあって、慣れ親しんできた。高校時代から始めたDJも、その音楽好きが高じて始めたもの。
今はほとんど手付かず状態だけど、友達や知り合いに呼ばれてクラブでプレイする時もある。DJブースから見える景色は自分にとって特別な場所で、今度誘われたら絶対に行きたいと思った。



「この子もクラブとか行き来したりしてんだろーな〜。にしてはメイクとか全然派手めじゃねーけど…。つーか、素っぴん?」



ソファに腕だけを突きながら、彼女の顔を覗いてみる。


俺の目の前で眠るこの女の子は、寝顔だけ見ていても分かるぐらい端整な顔立ちだ。目を閉じているから、茶色の睫毛が長いのもよく分かる。
運んでくる為に抱き上げた時には、すげー男目線だけど、スタイルも良いと思った。羽のように軽いのに、街に溢れる狂信的なダイエット信者には見えない。
手足は長く、スタイル抜群で健康的。顔も恐らく可愛いし、栗色の髪の毛は綺麗。それなのに、なぜかダンボールに入れられて放置されるような、信じがたいことに巻き込まれている。
理解に苦しむって、こういうことを言うんだろう、きっと。



『ん……』

「あ、…っと」



だいぶ楽になってきたのか、呼吸が穏やかになり、寝返りも打ち始める。拍子に額に当てていたタオルが落ちて、軽く髪を掻き分けてあげた後、また元通りにしてあげた。
やっぱり髪はサラサラと綺麗で、小さく眠る様子は動物のようだ。



「ははっ。なんか猫みてぇ…」



ああ、プライベートを充実させる為に何かペットを飼うのもいいな、なんて思うけど、自分の面倒も見きれていないのに、きっと無謀すぎる。
第一、動物を飼ったといえる経験が俺はほとんど無いし、この子は人間だ。たとえ、動物のように箱に入れられていたとしても。


けど、彼女の寝顔を見ていると、不思議に心は落ち着いた。



「つーか、これって端から見たら、俺って変態?」



――― それでも呆れたことに、彼女のことは全く知らないけど、白いワンピースは似合うと直ぐに思う。







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