太陽と月 - 4/9


side. A



それでも側にいたいと思うのは、俺の自己満足なのかな。
たとえ傷ついても、他人からすればバカみたいでも、相手は初めて本気で好きになった女の子だ。
その子が何かを抱えて生きているなら、少しでも楽にしてあげたいと思うのは間違ってる?絶望を信じている子に、そんなことないよって言うのは、自分勝手なこと?
杏奈がこんな風に自虐的になるぐらい必死で孤独に耐えているのは、いくら頭の悪い俺にだって分かるよ。



「杏奈…」



そう思うようになったのは、杏奈と同じ夜を過ごして2度目の時。
真夏の熱帯夜、気温とアルコールとキスで熱くなった体に、理性なんて働くわけが無かった。今でも、ベッドで杏奈を押し倒した時の景色が、しっかりと目に焼き付いている。
強烈な快感と満足感。
でも、そんな子供っぽいだけの悦楽は、杏奈の言葉とオッド・アイだけで、浸る暇も無く、全部俺の中から消え失せた。


事を終えて話をしていた時、どういう流れか、2人で花火をすることになったのだ。



「なんで花火をすることになったんだっけ…」



そんな理由は、全く覚えていない。でも、街灯が二つ程しか無い俺のアパートの駐車場で見る杏奈は、息を呑むほど美しかったことは覚えている。
俺のTシャツを着た杏奈はより小さく見え、白い肌と透き通るような髪を、月が綺麗に照らす。
そして俺はその姿を見て、まるで独り言のように、余りにも自然に思ったことを口にしていた。俺の本音で、心からの言葉だった。


“杏奈は、月が良く似合うね”


この何気ない一言に、君はなんて返したか覚えているのかな?
化粧っ気のない顔で薄く微笑み、ありがとう、と小さく呟いた後に続けた言葉を。一瞬、瞳を切ない色で染めた後の、君の言葉を。



“それなら雅紀は太陽みたい”

“雅紀は太陽みたいに明るくて、光で溢れてて、私には眩しすぎるくらいだから”

“…その光で、私の記憶全部消してくれればいいのに”



「っ、…ダメだよ、杏奈…。そんなの良くない…」



思い出す度に、胸が苦しくなる。
一生の内の最高の褒め言葉は、忘れられないぐらい優しくて哀しくて嬉しくて……、



「そんな風に思ってもらいたくて、俺は言ったんじゃないんだよ…」



――― 時々、凄く憎らしい。残酷なほどに。






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