太陽と月 - 3/9


side. A



杏奈と初めて出会ったのは、2年前。
当時仲の良かった友達の1人が、すっごい可愛い女の子を最近良くクラブで見かけると、俺に声をかけてきたのが始まりだった。
俺も含め、ゲーム感覚で恋愛を楽しんでるようなヤツばっかりで、その時もあわよくば…という気持ちが先行していたのを覚えている。
でも、そんな軽薄な態度も想いも、杏奈はその存在だけで、全部吹き飛ばしてしまった。



「そうだ、あの時だっけ…。初めて会ったの…」



そこに居たのは、噂通りの“すっごい可愛い女の子”。
小柄だけどスタイルも良くて、冷たい印象の瞳は黒とグレーのオッド・アイ。見つめていると、その瞳の奥に吸い込まれそうになった。
特定の誰かと一緒にいるのは見たことがなく、でも誰といても、杏奈が無防備に笑顔を見せることはない。それが余計に近づき難くて、評価は上がっていく一方だった。


そして、文句無しに。今までも、これからも。
杏奈は俺が出会った女の子の中で、一番素敵な女の子だ。



「一目惚れ…っていうのかな…?やっぱり…」



好きだと気付いてからは、迷惑がられようが、嫌な顔されようが、そんなの気にしない。杏奈に少しでも近づけるなら、何でもした。
その甲斐あってか、最初は無反応だった杏奈も、だんだんと俺に打ち解けてくれるようになったんだ。
けど、俺はそれだけじゃ十分じゃなくて、全部独り占めしたくなっちゃって、凄く欲張りになっちゃって……。


その結果、ほんの少し…。2、3回ほど。

……色んなことを言い訳にしては、杏奈と体を重ねてしまった。



「っ、…」



周りをうろつく男の大半は、杏奈とそうなることを望んでいる。俺だって、そうなりたいから無理に手を伸ばした。
それはマツジュンだって同じで、自分のことを棚に上げて言いたい放題言えるなら、“俺よりも多いんでしょ?だって今でも時々、2人して妖しい空気出すもんね?!”…ぐらい言ってると思う、俺は。
それなのにそんな風に言えないのは、マツジュンも俺と同じ気持ちを味わい、自分の愚かな行動を後悔しているのが分かるからだ。



――― 何度抱き合ったって、心だけは許してくれない。杏奈の感情が、全然見えない。






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