2013/12/30
Feels Like Home.


side. O



ふと、窓の外を見て驚いた。寒いなぁ…とは思っていたけど、雪が降っている。12月、年末らしい天気に、思わず妹の杏奈と雅紀の3人で見入った。
場所が場所なだけに、積もるようなことはまず無いはず。それなのに、雪を見るとワクワクしちゃうのは昔からだ。たぶん、童心に返るって、こういうことを言うんだと思う。


「おお!すげぇーなぁー。めっちゃ綺麗じゃん」
『ねー!少しでいいから積もらないかなー?そしたら、雪だるまとか作れるのに』
「あー、それいいね!玄関のとことか、ウッドデッキに置いて飾ったら、絶対に可愛いよ!ひゃひゃ、雪乞いする?」


ウッドデッキの茶色の板が、1ミリごとに白い雪で染まり、溶け、また染まる。どうやら雪を見てテンションが上がっているのは俺だけじゃないらしく、まだ積もってもいない雪に、雅紀と杏奈は大はしゃぎだ。
でも、そんな俺たち3人を呆れ気味…というか、若干冷たい目で見ているのが、潤と和だったりする。翔くんは中立なのか、そんな俺たちを笑って見ていた。


「雪はいいけど、ちゃんと仕事してもらえる?なんか、普通に掃除から脱線して、肩並べて窓の外眺めてるけど、そこの3人…」
「ははは!確かに自然だったなぁ、今の流れ。早かったもんな、雪に乗っかるのが」
「つーか、雪で騒ぐとか子供なの?って感じだよね。こんな雪降ってて寒い中、外出て雪だるま作りたいっていう感覚が、俺にはよく分かんないよ」
『えー?でも、和兄ぃも雪好きだって言ってたじゃん。積もったら、一緒に雪だるま作ろうよー!』
「見るのは好きだ、って言ったの。てか、お前も雪見てないで、こっちに来なさいよ。まだ全然終わってないでしょーが」


和にそう言われると、唇を尖らせながら、渋々窓の側から離れる。雅紀も俺も、それにつられる形で元居た場所に戻る。今は年末恒例、大掃除の真っ最中だ。
とりあえずは出来るとこから!ということで、新聞をまとめたり、要る雑誌と要らないのを分けたり、キッチンやサイドボードを整理したり。埃が立たない程度に、朝から地味に作業を続けている。
潤は調味料の一つ一つから、キッチン用具を綺麗に磨き、翔くんは自分の参考書に付箋を付けつつ整理。雅紀は雑誌をまとめ、新聞を縛り、色んな記事を見つけては度々笑っていた。
そして、和と杏奈は……、


「これは?もう観ないでしょ?」
『やだ、消さないで!もう一回ちゃんと観たいし、観終わったら編集してまとめるんだもん!』


テレビの真ん前を陣取り、和がリモコンを操作しながら、杏奈に一つずつ確認を取る。
延々と朝から続いているこの作業は、年末だけじゃなく、季節の変わり目によく見る光景。ハードディスクの容量を空ける為の、録画した番組の削除祭り。なんともデジタルな、整理作業だ。


「お前さ〜…!そんなこと言ってたら、全然進まないじゃん。てか、よくここまで録画して溜めこむこと出来たな!なんだよ、“アナホリフクロウの秘密”って!」
『アナホリフクロウはアナホリフクロウだもん!私が何録画して、何観ようと勝手でしょ!和兄ぃの意地悪ーっ!』


和をイライラさせている原因は、ハードディスクの3分の1を占めている、BSでやっているマニアックな動物番組。誰もが関心を持てる内容でもないだけに、下手な連続ドラマよりも量があるこの番組は邪魔だ、というのが和の言い分。
俺なんかは、流行りに流されず好きな番組をワクワク観ている杏奈は、なんか微笑ましくて可愛いんだけど、ハードディスク的にはそうもいかないらしい。


「アナホリフクロウ?何それ、杏奈。動物ものの番組〜?」
『うん。可愛いんだよ〜、雅兄ぃ。木の上とかじゃなくて、地面の穴の中に住んでるフクロウなの』
「え、それ…自分で掘ってるの?フクロウが?」
『ううん。プレーリードッグが使わなくなった穴を拝借するの』
「っ、ふははは!拝借って!ちょっとそれ、面白いな!」
『ねー!?』
「っ、ちょっと!雅紀と兄貴はともかく、翔ちゃんまでアナホリフクロウに興味示さなーい!永遠に終わんないでしょーが、これじゃあ!」


でも、そんな和の訴えは虚しく、雅紀と杏奈を筆頭にして、ちょっと観てみようよ!となってしまう。いつの間にか、翔くんもダイニングテーブルから離れ、俺たちと肩を並べていた。
リモコンをムリヤリ奪われた和は、そのまま顔を両手で覆いながら、床にペタンと寝転がる。潤もキッチンから、複雑そうに顔を歪めた。


「…本当だ〜!普通に住んでるね、穴に!意外と小さくて可愛いじゃん!」
「てか、周りにプレーリードッグも半端なくいるな…。なんか、雰囲気、智くんに似てない?」
「え、プレーリードッグが?そうかぁ?」
『あははは、似てる!可愛い!』


テレビ画面に映る、夕暮れの中で黄昏ているプレーリードッグを見て、2人がケラケラ笑う。雅紀は雅紀でアナホリフクロウに夢中になっていて、いよいよハードディスクの整理はおざなりだ。
翔くんと杏奈に挟まれ、でももう完全に横になっている和は、諦めたのか潤にコーヒーを催促する。


「ってか、凄くない!?虫の獲り方!走るの?飛ばないで走るの、このフクロウ!?」
「はははは!猛ダッシュじゃん!ヤベぇ、超ツボった!翼は何の為にあるんだよ、ふははは!」
『そこがいーんだよ!飛ぶ必要なんて無いの、アナホリフクロウは!』
「くふっ!これいいね、面白い。俺ももっと観たいから、取っておいてよ杏奈」
「「……」」


シュールな動物番組に時間を奪われ、肝心な作業は中途半端。でも、それはハードディスクの整理だけに限ったことじゃなく、ほとんどの作業に言えることだった。
雅紀の雑誌も開きっぱなしに放置され、ダイニングテーブルでは大量の参考書が積まれたまま。挙句、唯一ちゃんと仕事していたはずの和と潤も、今ではダイニングテーブルの端でコーヒーブレイクに入っている。
面白動物に心を奪われている俺が言うのもなんだけど、これ、たぶん進まない……、


『ねー、智くん!これ見て!』
「さと兄ぃ、ヤバい!アナホリフクロウ、凄いよ!」
「っ、うるさいな、あんたら!もういいよ、そのフクロウは!」
「つーか、マジでちゃんと掃除して欲しいんだけど。終わんねーじゃん…」


大興奮で呼ぶ雅紀たちに、イライラが隠せない和たち。でも、なんだかんだいって上手く収まるのも俺たちだったりする。
だから、掃除も全然進まないし、ちょっとグダグダしてても、きっと最後にはなんとかなるはずだ。


「…いや、それとこれとは別か」
「はは。何が?」


それでも、来年も俺たちらしくいられるように。その為の準備だけは、しっかりしていこう。

今日よりも、明日。今年よりも、来年。
それに、1人より6人だ。




Feels Like Home.

(今年も楽しかったけど、来年も楽しいよ。きっとね。)



End.




Feels〜を更新しようと思っていて書いてたんだけど、これ以上話が膨らまなさそうだったのでボツにしました。でも、もったいないんで、短くしてここにアップしときます。高校生 ver.ですね。

年末なので大掃除。そして、HDDの整理!
私はようやくラストホープを編集終えました。今更感、ハンパないです。家族ゲームはその日の内に編集してたんだけどね…。これが担当愛なんでしょう、たぶん。ラストホープの次、24時間テレビだったからね、ビックリですよ…。(´_`)←

因みにアナホリフクロウは、本当にBSでやってました。可愛いですよ。全然飛ばないけど(笑)
妹ちゃんはバラエティ番組や流行りのドラマよりも、こういうのが好きそうなイメージです。








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