さくら、ひらひら
「あっ、」
入学式してからちょうど一年くらい、経ったはずの頃。
休日だったから同じクラスの颯斗と久しぶりに外を出てみたら、桜が満開に咲き乱れていた。
「きれー…」
「そうですね…」
散っていく花びらが舞って桜吹雪になっていて、とても綺麗な風景だった。
綺麗な風景を見ると、こう、時を忘れたような感覚がする。
私も颯斗も思わず感嘆の溜め息を漏らす。
風景に見とれながら、花びらを一枚だけでも取れたら幸せになれるだろうか、とふとした考えが浮かんだ。
「…………」
そのまま花びらを取ろうとしたら、ひらりと逃げるかのように地面に落ちる。
さらにもう一つ、挑戦してみても結果は同じだった。
あれ、なんでとれないの!?
「うう……」
「大丈夫ですか?」
しゃがみ込んで少し泣きそうになったそのとき、颯斗は苦笑しながらもこちらに花びらを一枚渡した。いつの間に取ったんだろう…
「どうぞ、あげますよ」
「…いや、でも、いいの?」
幸せ逃げちゃうよ?と言ったら、颯斗は穏やかにいいんですよ、と言って微笑んだ。
「ななしさんの横にいれるだけで、僕は十分幸せですから」
ふと見上げたときの颯斗の髪が、幸せを運ぶ桜色だ、とその時思ったのはその約三十秒後。
(20110419)
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