「あ、眞緒ちゃんだー!」


学校の放課後の時間帯。
沢山の生徒(もちろん、殆ど男子なんだけど…)が行き交う中、明るい女の子の声がして振り向いた。
…まあ、この星月学園には女子が三人しかいないわけで、すぐに誰だかは特定できるんだけど。



「千鳥先輩!」

「久しぶりだね!」

「……え?いやいや先輩、昨日も会いましたって」

「細かいことは気にしなーい」



細かくない、よね…?

近づいて来た千鳥先輩はそのまま私の首に腕をからめる。……多分、この学園の男子たちがそんなことされたら卒倒だと思う。実際、なんだか私への羨望の眼差しがいくつか見受けられる。

……私、本当に女に生まれて幸せ……!


そんな美人先輩に抱きつかれて内心にまにましていたら、後ろの方から呻き声がして思わず飛び上がった。



「え、」

「ま、まお……」



後ろを振り向いたら、………一樹兄が苦しそうに廊下のど真ん中でうずくまっていた。
にこにこしている千鳥先輩と一樹兄を見比べて、状態を瞬時に理解した。



「やっぱり一樹は面白いなあ」

「………千鳥先輩、あんまり一樹兄をいじめないでやって下さいね……」



まあまあ、と言いながら千鳥先輩は未だに私に抱きつきながら歩き出したので私も歩く。

……待て、とかすれた声を発した一樹兄を放置して。
一応、心の中で合掌しておいた。南無南無。



「ね、ね、眞緒ちゃん」

「?何ですか?」

「せっかくだしさぁ、またおやつ作ってよー!」



そう言いながら甘えた声ですり寄ってくる千鳥先輩に微笑んだ。
……本当に猫のように可愛い先輩だなあ………


いいですよ、と言ったら千鳥先輩はやった!と嬉しそうに笑った。

言動といい仕草といい、本当に可愛い……!



「千鳥先輩といると、なんだか和みます…!」

「え、私も眞緒ちゃんといると癒やされてるよー?」



ほら、早く食堂に行こう!と千鳥先輩は(未だに抱きつきながら)歩く速度を速めた。


背中越しから、微かに千鳥先輩のお腹がぐう、と悲鳴をあげていたのがわかった。
……千鳥先輩、お腹すいてるんだなあ……


「じゃあ、シュークリーム作ろうと思いますので、千鳥先輩も一緒に作りませんか?」

「わーい!作る作る!」




嬉しそうに笑う千鳥先輩を横目に、私も小さく微笑んだ。





(貴方といると、どこまでも優しくなれる)

タイトル/幸福
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