「はー綺麗だった…」

プログラムが終わってから私は大きく伸びた。
ずっと上を見上げていたから首が少し痛い…


「あの……」

「あ、さっきはいきなり話しかけてごめんなさい」

「いえ、大丈夫なんですけど…」


なぜ私に声をかけたんだ、とでも言いたげな表情を彼女はしていたので、私は苦笑を浮かべた。ごもっともな質問だ。



「このプラネタリウムにうちの中学の子が来ていただなんて思わなかったんです。だからつい」

「そ、そうだったんですか(つ、つい……)」

「星、好きなんですか?」

「は、はい……まあ……」


私がそう聞いてみたら彼女は戸惑いながらも頷いた。
可愛いなあ……和むなあ…



「私は3Fの樋口眞緒です、あなたは?」

「私は……3Aの天野千歳です」

「同い年だね!タメ口でも大丈夫?」

「はい、大丈夫です」



私は手をさしのべる。
天野さんはその手を凝視してからこちらを見る。


「千歳ちゃん、って呼んでいい?私のことは眞緒でいいから。……今度一緒にまたプラネタリウム見に行かない?」

「………うん!」


天野さん、じゃなくて千歳ちゃんは嬉しそうにはにかむように笑うと、私の手を握った。

細められた瞳が薄暗い中でのほのかな光に照らされて青く輝いていた。




*



「懐かしいなあ……」

ぼうっと歩きながら微笑む。


手にしているのは弓道部に差し入れる予定のお菓子。
目指すは弓道部だ。



「千歳ちゃん、元気にしてるかな……あ」



道場に到着して、中が休憩中なのを確認してから大きく息を吸って差し入れでーす、と叫んで神聖な弓道道場にずかずかと踏み込む。

中にいた弓道着を着た青髪の後ろ姿を見て、その子の名前を呼んだ。



「千歳ちゃん!」

「………ま、眞緒ちゃん!?」

「久しぶりだねー!まさか同じ高校だったなんて!」

「うん、そうですね!」


千歳ちゃんに抱きついたら、千歳ちゃんも抱きしめ返してくれた。
千歳ちゃんだ……本当に本物の千歳ちゃんだ……!



「む、眞緒来たのか」

「なーに二人だけの世界に入ってるんだよー」

「あ、龍之介、それに犬飼くんも!」



しばらく嬉しさに浸っていたら、龍之介と犬飼くんに邪魔……じゃなくて、話しかけられる。
すると犬飼くんは鼻をすんすんしてから笑った。



「お、今回はどんなお菓子なんだ?」

「お菓子…?」

「うん、弓道部への差し入れだよー!じゃん!」


お菓子を取り出すと、三人が嬉しそうに笑った。
龍之介が感嘆しながら呟く。



「む、ブルーベリーパイか」

「うん、千歳ちゃんの青髪を連想して、ね」

「眞緒ちゃん……」


千歳ちゃんは微笑んだ。
あの時の、はにかむような可愛らしい微笑みで。





(淡い、きみのいろ)
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