星月学園に入って数ヶ月か経ったある休日。 私は寮の自室で龍之介に電話をかけていた。 内容は今度の弓道部に差し入れを持っていくときの差し入れ内容と弓道部の人数の確認だ。 「…で、弓道部への差し入れはお菓子でいいの?」 『ああ、頼む』 「はいはい、じゃあ確かメンバーは龍之介に月子ちゃん、金久保先輩に梓くん、それから犬飼くん、白鳥くん、小熊くんでいいのかな?」 『ああ、そのことだが』 近くに適当にあった紙とペンを取る。 龍之介に何?どうしたの?と言いながら私はその紙にさっき言っていた弓道部員の名前を書く。 『同じ中学の天野が今週から弓道部に入ることになったんだ』 メモをとろうとして私は動きを止めた。 ……え、天野ってもしや…… 「……ち、千歳ちゃん?」 『なんだ、知り合いだったのか』 「3Aの千歳ちゃんだよね?知り合いというか」 私は紙に千歳ちゃん、と書きながら笑った。 「仲良しの友達だよ」 * 天野千歳ちゃんと出会ったのは、中学二年になった年の話だった。 二年になりたての頃、私は学校帰りによくプラネタリウムに行くことがあった。 中学の少し近くに、市立のプラネタリウムがあって、その日部活もなく暇だったからプラネタリウムに入った。 薄暗い建物の中。 なけなしのお小遣いを払ってまで入る価値があるプラネタリウムだったから余計に胸が踊った。 「今日は珍しく人が少ないなー…ん?」 どこに座ろうか、と悩んでいたらふととある席に目が止まった。 同じ制服を身にまとっている女の子。 薄暗いから他の特徴はうまく掴めなかったけど、同じ中学であることだけは分かった。 ――――初めて見る子だ… ほんのちょっとの好奇心で、その子に話しかけてみよう、と思った。 類は友を呼ぶ、と言うし、もしかしたら星好き同士仲良くなれるかもしれないし! そろそろと歩み寄って、その子の近くに立ち止まると小声で話しかける。 「あのー……」 「!は、はい!」 いきなり話しかけたからか目を丸くした女の子。青い髪を一つにして結っていて、その瞳も深い海のような青だった。 ……か、可愛い…! 清楚系美少女だ、うちの中学にこんな子がいたなんて! しばらく心の中で葛藤していたら、その子が怪訝そうにこちらを見てきたので慌て話す。 「と、隣座っていいですか!?」 「……………え」 「(しまった、つい勢いで)……い、いきなりごめんなさい……」 「いいですよ、隣どうぞ」 「あ、ありがとうございます!」 彼女が指差した隣の席にそろりと座る。 何だかわくわくしてしまって、上を見上げた。 辺りが一気に暗くなり、少しだけ騒がしかった周りが静かになる。 ――どうやら、始まるみたい。 . ← back → |