残酷に天使が微笑む
大量の男達をなぎ倒しながら、少女の長い黒髪が揺れた。
Zodiacに入って早々に、Miraは早速任務を言い渡された。
目的は、とある弱小ファミリーの殲滅。どうやらZodiacに襲撃をかけようとしていたらしく、それを見かねたのかこちらが先手をかけよう、という魂胆らしい。
数多くいるZodiacメンバーから殲滅役に選ばれた三人の内の一人に、Miraが選ばれたのだ。
(………どういうことなんだろう)
愛用の銃を使って敵の急所に何発か食らわせながらMiraは訳が分からずにいた。
……いくらなんでも、こんな任務に入りたての新人を駆り立てるなんて、鬼畜すぎる!
しかも、と思いながらMiraは周りを見渡す。
(……味方が、一人も見当たらない?)
この任務は三人で行う、と言われてはいたが、その後二人とはまだ顔合わせもしていない。
確か、Scorpioと指揮官のVirgoだったはず、だ。
(後に合流するはずだって、Libraは言っていたはずなのに)
周りには、敵と思しき人が数人か。
チッ、と小さく舌打ちをしながら銃弾を装填して、敵に照準を当てる。
敵の男の一人は唸りながら激しく動き回りながら雄叫びを上げた。
「んのやろおおおおおおおおっ!」
「っ、遅い!」
Miraは間髪いれずに三発。
ばんばんばん、と男に打ち込むと、そのまますぐ近くの後ろにいた敵を蹴り落とした。
敵の男たちが次々と倒されていく。
少しだけ滲み出た汗を拭いながら、最後の一人に銃を向ける。
男はひっ、と小さな悲鳴をあげると、次第に涙目になっていく。懇願するかのように両手を合わせていた。
Miraはなお銃を下ろさない。
「や、止めてくれ…!助けてくれ、お願いだ…!」
「……………」
一瞬、Miraが笑った。
男は救われた、と嬉しそうにして肩の力を緩めた。
ぱん。
刹那、乾いた音がする。
先程の男はごぶっ、と大量の血を吐き出すとそのままゆっくりと倒れた。
―――静寂。
ふう、とため息をつきながらホルスターに銃をしまおうとしたら、後ろから足音がしてまだ敵がいたのか、と思わずまた銃を出して相手に向ける。
Miraは大きく目を見開く。
対する相手も、Miraに気付いた瞬間に驚いたのか固まった。
一瞬の沈黙があったが、相手の男がすぐに元の(眉間にしわを寄せた)仏頂面に戻る。
「お前が、Miraか」
その言葉に、Miraは瞬時に状況を理解した。銃を下ろしながら苦笑に近い笑みを零した。
――――私の小さい頃からの幼なじみが、同じZodiacのメンバーだなんて。
「………まさか、ここでまた会うなんて思わなかったなー」
「………なぜ、ここにいる」
「……そんなに睨まないでよ、龍……、じゃなかったね、Scorpioだった」
「質問に答えろ」
尚引かないScorpioにMiraはやれやれと肩をすくめてから、少しだけ微笑みながらScorpioを真っ直ぐ見上げる。
「願いを、叶えるためよ」
「……………、」
「それより、早く此処を出て、Virgoに合流しよう?」
「…………ああ、そうだな」
煮え切らない表情をするScorpioを背にしてMiraはすたすたと歩き始める。
横たわる死体たちを見ながら、静かに呟いた。
「任務、完了」
(20110630)
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