全ては僕の籠の中
「Taurus、いきなり呼び出すなんて珍しいわね」
Zodiac本部の一室。
薄暗い部屋の中に、ふかふかした2つのソファーが対面しているようにどかりと置いてあって、その間にはテーブルが置いてある。
見た感じ接客室のようなその部屋に、二人の男女が座っていた。
男はいかにも柔和そうな表情をしていて、その髪は空のような色をした透き通ったような髪である。
Taurusと呼ばれた男は、静かに微笑みながら、目の前にいる女を見つめる。
対する女は、茶色の髪に、水色の瞳。肌は白く透き通り、体格も細めだ。
スパンコールが散りばめられた、夜色のドレスが白い肌と対照的で良いコントラストを生み出していた。すらりと伸びた細い脚は、網タイツを纏いながら組まれていた。
夜会のパーティーにいてもおかしくない格好の女。
……だが、彼女が手にしているのは、ナイフとなかなか物騒ではあるが。
Taurusはそれを気にせずに話を進める。
「Lupus、MiraとCancerのことについて何か情報とかないかな?」
「……いきなりね。あの、最近入ってきた二人のことでしょう?」
Lupusと呼ばれたその女はないわよ、と淡白に答えながら愛用のナイフの手入れを始める。
Lupusは世界各国を遊説していたベテランの情報屋だ。
世渡り上手で、政治面までにも繋がりを持つ有名な情報屋だ。
Zodiacの一員となった彼女は、綿密な計画を建てる際に味方が有利になるような情報を大量に持ち合わせているので、今やなくてはならない存在となっている。
但し、膨大な情報量があったとしても、なんでも知っているわけではない。
基本、彼女は自分が興味のないことは一切知らないのだ。
……Miraたちのことも、例外ではないようだ。
「あの二人について、詳しい情報が欲しいんだ」
「へえ、またなんで?」
「一応、だよ。あの二人は怪しい感じがするから」
「……ぬかりないわね」
「ふふ、確かにそうかもね」
「……、まあいいわ。適当に調べておくわ」
ほのかな光が、Lupusを照らした。
彼女の腕をTaurusが見ると、そこには刺青が入っていた。
…それは、狼の刺青。
愛用のナイフを煌めかせながら、Lupusはにやりと妖艶に笑った。
「あの二人、なんだかきな臭いなあとは思ってたし」
――――狼に狙われた仔羊たちは、もう逃げることはできない。
(20110627)
タイトル/秋桜
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