悲観主義者が笑った、

「私を、Zodiacに入れて下さい」


こいつらは、かなり異色だと思う。
ボスであるLibraの部屋に乗り込んだ瞬間、俺たちの前で頭を垂れたこの女。
この女と共にやってきたCancerもなかなか面白いし、奇妙な二人組が自己志願をしてこちらに入ろうとしてるのだ。

ふと見えた女の拳銃はいかにも使い込んだ感じがした。
……とりあえず、相当のやり手だというのはよくわかった。


どうでもいいことに感心していたら、Libraがそれまで頑なに閉ざしていた口を開いた。



「なぜ、入ろうと思った」

「………、」


女はLibraを見てから少し顔を曇らせた。
暫く俯いてから、ようやく決心したかのようにこちらを真っ直ぐ見てきた。
―――射抜かれるような、視線だった。



「人にはそれぞれの願いがあります」

「……………」

「私は自分の願いを、叶えるために来ました」



しっかり答えているようで、実は明瞭ではない応答。
要は、詳しいことは話したくないらしい。

Libraは大きなため息をつくと、軽く頭を掻いた。



「今日から、お前はMiraだ」

「………はい、ありがとうございます」



女、もといMiraは、軽く会釈をすると部屋を静かに出て行く。

Libraはそれを見届けてから、こちらを訝しげに見てきた。



「Aries、あいつはお前の血縁だったんじゃないのか」

「………そうだけど、俺たちはお互いに顔を合わせるのは初めてなんだ」

「……そうか」


俺たちはそう話してから、Miraが出て行った扉を見つめる。

何かが、変わるような予感がした。



*



「Cancer、お待たせ」

Miraは扉の外で待っていたに声をかけると、Cancerはじゃあ行くか、と言いながらに近づいた。

Miraが軽く頷くと、二人は長い廊下を歩き始める。


廊下に、二つの足音が響き渡った。




(20110625)





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