火照る頬が冷めない
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「おい、それなんだ?」
「…七夕祭りの短冊です」
夏も真っ盛りに入りそうな季節の放課後の教室。
片手に持てそうなサイズのピンク色の紙に願い事を書こうとしたら、一つ上の不知火先輩が横から覗き込んできた。
お願い事を見られたくなくて、思わず紙を裏返しにした。
願い事を書いているときにも、自分で書いてる内容にこっぱずかしくなったくらいだしな…
不知火先輩は「ふーん」と言いながら私の目の前の席に遠慮もなく座った。
というか先輩、なんでここにいるの…
手元をじろじろ見てくるので、なんですか、と先輩を睨んだ。
「あ、虫!」
「え!?………あ」
瞬間。
不知火先輩はそう言いながら上を指差したので、動揺して上を向いたら素早く手元の紙を取り上げた。
今の、絶対咄嗟についた嘘だ…!
睨みつける私を気にもせず、不知火先輩は私の短冊に目を通す。
途端に厭らしい笑顔を浮かべる、うわっいやな予感……
「『お嫁さんになりたいです』かー…可愛い願い事だななまえ」
「か、返してください!」
「それは聞けない願いだなーお前の反応が面白いしなあー」
「面白くありません!」
「へえー………顔、かなり赤いけどな」
「う、」
今にも顔から火が噴きそうなくらいに熱い。
かなり恥ずかしい…!
大分時間が経ち、笑い疲れたのか不知火先輩は短冊を返してくれた。
素早くそれを取って、鞄にしまい込む。先輩のバカ。
「……………」
「ははは、悪かったな」
「全然謝りに誠意が籠もっていませんが…」
真っ赤になって俯いた私の前で、不知火先輩は本当に悪かったって、といつもの得意げな笑みを向ける。
そして、何食わぬ顔でさらりと言い放った。
「じゃあ、詫びとして、いつか俺がその夢を叶えてやるよ」
ああ、もう。
なんで先輩はそんなキザな台詞まで格好良く言ってしまえるのでしょうか。
嬉しすぎて、くらくらしてしまうこの眩暈のような感覚を、本当にどうにかしてください。
火照る頬が冷めない/凪様へ!
(20110620)
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