硝子越しの見つめ合い
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最近、教室の席替えで窓際の席になったときに、大きく変わったことがある。



(あ、なまえじゃん)


授業の合間の休み時間。
寝ようと思ってふと外を見たら、外でなまえがベンチに座りながら本を読んでいた。

なまえとは入学式からの知り合いだ。
普段でもよく会うけど、なまえはこの休み時間の時に必ずあのベンチに座って本を読んでいる。


なまえがぱらりと本のページをめくる。


何も大層なことをしていないのに、何度も会って見ているはずなのに、目を奪われた。
白い肌に、流れるような艶やかな髪。
学校指定の夏服の袖から、細めでしなやかな腕が延びていた。


(…………って、)

いけない、と首を強く振る。

これじゃあ俺ただの変態じゃないか!


落ち着いてから、もう一度窓際を見てみる。

と。


「……………!」


いつの間にか、横にはクラスメートと思われる男子がなまえに話しかけていた。

親しげに話してるそいつらをみて、もやりと黒い感情が溢れそうになる。


―――――もしかして、彼氏とか?


握っていた拳を更に強く握りしめる。
ギリ、と音がする。



ふと、なまえが、こちらを向いてた。
一瞬、ただの自意識過剰かと思っていたけど、射抜くような真っ直ぐな視線にこちらを見ているんだ、とすぐにわかった。

視線が、絡み合う。
なまえは、笑いながら手を振った。


本来だったら軽く手を振り替えしたりしたかもしれないけど、どうしたらいいかわからなくて、苛立ちながらも思わず視線をそらす。



…なまえが途端に悲しげな顔をしていたなんて知るはずもなかった。



*





あれから何週間経っただろうか。

毎日、決まった時間にあのベンチで本を読むなまえをひたすら見つめる。
たまに目が合うこともあるんだけど、それもたった数秒間。俺からすぐにそらしてしまう。

だからか、たまになまえから逸らされることもある。
そういう時は、心臓が抉られるように痛くなる。


なんでこんなにも苛立っていたり切なくなったりしているのかは、いくら俺でももうわかっている。

すると、横から月子に声をかけられた。



「哉太ー!………あれ?まだなまえちゃんと気まずいの?」

「なっ!」


まだって何だ、なんでこいつが知ってるんだ!?

様々な疑問が走馬灯のように走る中、月子は笑いながら「何年幼なじみやってると思うの?」と言われた。

うわっ、恥ずかしい…




「なまえちゃん、いつもあそこで本読んでるよねー」

「………まあな」

「この前、新しい恋愛小説を買ったって言ってたよ?」


あれ、恋愛小説なんだ、と思うと新しいことを知れて嬉しくなる。
でも、それだけじゃなくなまえのことをもっと知りたい、と思う。

……俺、相当重傷だな。



すると、なまえがこちらを見てきた。
今日もまた、お互い目をそらすだけだろうな、と思った。



「…!…………」


(ん…?)

けど、なまえはいつもとは明らかに違っていた。
こちらを見て、大きく目を見開いて、それから悲しげな顔をしてから俯いた。


(………悲しげ、に?)



どうして、なまえが悲しげな表情をするんだ?


横で月子がふふっ、と笑った。
訝しげに月子を見ると、月子は微笑んだ。



「気になる人に、彼女がいるかもって思ったのかもよ?」



その言葉を聞いて、俺はすぐに立ち上がって教室を走りながら出る。


なまえに、会いに行こう。

会ったら、何を言おうか。



よっ、とか、久しぶりだな、とか、ごめんな、とか、




―――――好きです、とか。





硝子越しの見つめ合い/ぺぺ様へ!
(20110617)




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