幸福の未来予想図
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「翼くんって将来なにやりたいの?」
「ぬ?俺?」
生徒会室の翼くんのラボの中。
いつものことなんだけど、こちらのことそっちのけで発明品に没頭している翼くんにふと聞いてみたら、珍しく発明品を弄る手を止めてこちらを見つめてきた。
翼くんは同じクラスの友人で、隣の席だったから、偶然知り合って。
初めはただのクラスメートだったのに、話しているうちに翼くんって素敵な人だなあと思うようになった。
気付いたら、目で追いかけたり。
ふと見る無邪気な笑顔にときめいたり。
発言の一つ一つに一喜一憂したり。
…とどのつまり何が言いたいかと言うと。
いつの間にか私はこれをかなり語りこんでしまえるほどに翼くんが好きになっていた。
(…………まあ、一方的な片思いだけど)
うぬぬ、と唸る翼くんを前に私は心の中で自嘲の笑みを零した。
―――――叶わない恋だというのは、既にもうわかってる。
相手は、きっとこちらをただのクラスメートとしか思ってないから。
「やっぱり、梓が乗るための宇宙船を作るのだ!」
「あはは、翼くんらしいね」
「なまえは?」
純粋な子供のような、つぶらな青い瞳に、吸い込まれそうになった。
――――翼くんと一緒に、いたいかも。
その言葉は飲み込んで、作り笑いを浮かべた。
そんなことを言ってしまったら、今の関係が壊れてしまいそうで少しだけ怖かった。
「やっぱり宇宙飛行士かなあ」
「…梓と一緒だな!」
「うん、そうだね。私も、梓くんと一緒に翼くんの作った宇宙船に乗りたいなー」
「…………」
なるべく普通に振る舞おうと思って言ったけど、翼くんは俯いていて、応答がなかった。
あ………れ?
何か、変なこと言ったっけ?
翼くーん、と顔の前で手を振っていたら、いきなり翼くんが口を開いた。
「だめなのだ」
「え?」
まさかの拒否に、一瞬目の前が真っ白になる。
え、まさか……翼くんの作った宇宙船にお前は乗せないぞって言いたいの?
考えれば考えるほど悲しくなっていっていって。
視界が、微かにぼやけた。
――だめた、ないちゃだめだ
すると、目をこすられたような感覚がする。
びっくりして、目を見開くと、翼くんが拗ねた表情をしながらこちらを真っ直ぐ見ていた。
心臓が、いきなり跳ねた。
「梓と二人で宇宙になんて、行かせないぞ」
「へ、」
「なまえは、梓と二人っきりだなんて許さないぞ!」
「え、ふた………え、なんで?」
「うー………とにかくっ、なまえは将来、梓じゃなくて俺と一緒にいるの!」
突然の翼くんの発言に、頭がついて行かなかった。
い、今のは……ぷ、プロポーズと受け取ってもいいの、かな。
すると翼くんがぎゅっと抱きしめてきた。
耳元で好きだ、と囁かれて体温が急上昇する。
自分の想いは一方的じゃないんだと思ったら、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
翼くんと、一緒の未来。
想像すると、幸せで、さっき拭ったはずの涙がまた溢れた。
幸福の未来予想図/海里様へ!
(20110624)
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