きっと、夢じゃない
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弥彦のバカ。
彼女はそう吐き捨ててから俺をの前から走り去った。
「え、ちょ!?」
バカ、と言われたのにもそれなりにショックだったけど、それどころじゃなくて、追いかけるためになりふり構わなかった。
おいなまえ!と名前を呼びながら追いかけると、彼女は付いてこないで!と叫びながら俺から逃げた。
その対応に、俺は心の中で悲痛な叫び声をあげた。
ちょっと待てよ!
俺がさっき何か彼女にした覚えは、実は何もない。
たまたま星座科に用のあった夜久さんに話しかけただけ、のはずなのに。
どうしてバカ呼ばわりされた後に逃げられてるんだ!?
考えていたら、少しだけ切なくなってくる。
俺のことをバカって呼ぶほどに、嫌いなのか…?
思わず頭を振る。
だけど追いかけっこ?をしているうちに、男女の差は歴然、とはよく言ったもので、俺はいつの間にか彼女の近くまでに追いついていた。
そのままなまえの腕を掴む。
「っおい!」
「!」
「はあっ、どういう、はあ、ことだよ!」
走りすぎて、言葉が途切れ途切れになってしまう。
我ながら格好悪い…と少しへこんだ。
対するなまえは何故か肩を震わせていて、何事だと思っていたら両目に大粒の涙をためていた。………って。
「え!?な、泣いて!?」
「う、うぐ、だ、だって」
「わかった、俺が悪かったから!だから泣くな、な?」
まさか泣いてるとは思わなくて慌てて泣き止まそうと思っていても、なまえはそのまま続けた。
「いっつも、夜久さんと一緒にいるし、話しかけるときにはいっつも気持ち悪いくらいににまにましてるしっ、」
(……………ん?)
「今日だって、久々に星座科行ったらまた夜久さんとお話しているし…うぐ、」
涙を何度も拭いながら必死に訴えてくるなまえさんをよそに、俺はひどく落ち着けずにいた。
この反応。
これって、まさか、
「…………や、やきもち?」
「!!」
俺の言葉を聞いた瞬間、彼女の顔がみるみる赤くなっていった。つまり、図星、ということ?
嬉しさと興奮が混ざって、思わずなまえを思いっきり抱きしめる。
な、何するの、バカ!!と耳元で叫ばれたけど、耳が真っ赤ななまえに言われたバカ、という言葉がとても可愛く聞こえてしまう自分は自惚れてるんでしょうか。
きっと、夢じゃない/優希様へ!
(20110622)
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