分かりやすいんだよ?
ねがいをひとつかなえましょう。
―――
「あと、どのくらいなんですか。」
「・・・。」
「言ってください!この子は・・それを望んでいるんです。悲しくても寂しくても絶対受け止めて残りの時間を過ごすと。」
「あと、1週間です。」
――――
『そんなに写真撮ってどうするんだ?』
『ははっ。今年こそアルバム作る予定なんで。』
『お前まだ作ってなかったのか?』
『時間がなくて。』
・・・・・
「アルバム作らなきゃ。」
<ガサガサ、>
「あ。これは修学旅行の時の・・あ、ここには去年のハロウィンの。
ふっ、水嶋先生と陽日先生の顔・・。
月子は楽しそうだな。錫也も羊も哉太も。
みんな笑ってる。」
<ポタ、>
「もうちょっとだったのになぁ。
卒業式。」
・・・・
あとどれくらいなんですか?
――あと1週間です。
それは短くて、ですか?
――・・いえ。よくて、です。
そうですか。お母さん、卒業式出れないね。
――っ、
あーあ。こんなに元気なのにな。
――卒業証書、貰う?
用意できるなら!
・・・・・
「卒業式、明日か。
明日で10日だよ、みんな。」
先生!
――あ、お母さん!お忙しい中すみません。
いえ、それより・・
――ええ。娘さん、奇跡的にまだ・・。この調子なら卒業式も出られますよ。
ほんと・・ですか。
――ええ。
よか、った。本当に。・・よかった。
・・・・・
「これより第○○回星月学園卒業式を始める。」
<ざわざわ>
「名前ちゃん、きてないね。」
「・・ああ。」
「星詠み科、」
―――――
「最後は天文科。」
<バタン>
「おい。あれ見ろよ。」
「!月子、あれって、」
「すみません。遅れました。」
「名前ちゃん!!」
――――
お母さん、卒業式出たい。
――いいよ。
え?
――聞いて驚くなよー?もう退院していいって!
ほ、ほんと?
――奇跡が、起きたのっ!
―――――
「ええー、では。天文科代表、名字名前さん。前へどうぞ。」
「はい!」
<トタトタ、>
「みなさん、こんにちは。天文科代表を務めさせていただきます名字名前です。
私は今日この日まで高2の夏から病院で生活していました。」
<ざわざわ、>
「もう無理だと、そう言われたときは本当に死にたくて・・悲しくて。でもそんなとき、私の元に1つの写真が届きました。
それは、私の大切な人からの贈り物でした。
そこにはクラス全員が写っていて、相変わらず担任の陽日先生は小さかったけど、」
「名字!俺は小さくなんか、」
<がやがや、>
「だけどみんな笑顔で。私には眩しくて。でもこれを見て私は前に進もうと思いました。
今日ここにこれたのは、私の病気が回復へといい方向に進んでいるからです。
私、みんなに会えて、・・星月学園にこれてよかったです!!」
<パチパチ、>
―――
「名前ちゃん!退院できたんだね!」
「月子!」
「ほんとお前はいつも世話がかかるよな。」
「錫也!」
「名前、・・話があんだけど・・」
「哉太・・」
「「行っておいで/きな。」」
「うん!」
<パタパタ、>
「話って?」
屋上にきて私達は向かいあった。
「まずは退院おめでとうな。
それと・・」
「好きだよ?」
「!」
「さっきも言ったじゃん。”大切な人からの贈り物”って。それ、哉太のこと、」
言い終わる前に私は哉太に抱きしめられていた。
「馬鹿、先に言うなよ。俺も好きだ。」
「うん。」
知ってる。言わなくても知っている。
こんなこと言ったら哉太は怒っちゃうね。でもね、
分かりやすいんだよ?
(いつも私のことを見てくれる、)
(想ってくれる、)
「これからもずっと好きだ。」
「私も。」
私の一番の支えはあなたからの写真でした。
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