可愛い先輩とアップルパイ

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「……………」

さて、この状況を私はどう対処すればいいんでしょうか。


私は今、いつも通りに料理部の活動のために食堂に来て、とりあえずはエプロンを着ようとしてたんだけど…


「…………え、誰?」


テーブルにうつ伏せで寝ている少女(多分、見た感じ年下…かな?)を見ながら戸惑っております。

着ている制服は紛れもなくうちのなんだけど、うちの学園には確か私と月子ちゃん以外にいなかった、はずだよね…?



「新しく転入してきた人、かな…」

考えても仕方ないか、と勝手に結論付けながらキッチンに入る。

さて、何を作ろうか…




*




「ん………」


ふと目が覚めたら、私たちの学園の食堂の風景が目に入った。
あ、そっか……私、確か食堂で寝ちゃって…


むくりと起き上がると甘い匂いが鼻をくすぐる。
……すごく美味しそうな匂いだなあ……



「あ、起きた、」

「…………え」

「大丈夫?ここの新入生か何かなの?」


え……えええ、この子は?

黒髪に緑の瞳、長いロングのポニーテール……こんな子いたっけ?

えっと、確か二年には月子ちゃん以外の生徒はいないはずなのに、この子スカーフ(というかネクタイ?)の色が赤いよ、え、え、


混乱していた私が咄嗟に出した言葉は、考えていたことと全く違うことだった。



「………私、新入生じゃなくて三年生です」

「……え!?」

面白いくらいに固まってからうろたえ始めたその子は、あの、とかえっと、とか言いながら口をぱくぱくさせていた。開いた口が塞がらないみたいだ。

まあ、いつもの反応だから……気には…しないけど……


その子はしばらく唖然としてから、やっとの思いで口を開いた。



「えっと、あの……とりあえず折角作ったのでお菓子をどうぞ……」




*



いきなり食堂に出現した少女……もとい先輩は、さっき私が作ったアップルパイを食べながら自己紹介をしてくれた。


「私は、星詠み科及び西洋占星術科の葵ゆうです」

「葵先輩…ですか」


ふわりと笑う、可愛い先輩だった。
笑顔に少し、いやかなり和んでいたいたら、今度は葵先輩からあなたは?と尋ねられて慌てて答える。


「私は星詠み科二年の樋口眞緒です」

「そっか、じゃあ眞緒ちゃんだね」


か、可愛い…!


「まさか一樹兄のクラスにこんな可愛い女子生徒がいるだなんて思いませんでした」

「一樹兄……?」

「あ、私生徒会長の不知火一樹の従兄弟なんです」

「へえ、会長さんの従兄弟なんだ!」


か、会長さん…!
一樹兄を羨ましい、と思いながら私は立ち上がる。


「私、飲み物とってきますね」

「ありがとう」



私が(半ばスキップしながら)去っていくのを見届けてから、葵先輩は小さく微笑んだ。



「……まさか、また異世界に行くなんて思わなかったなー」


すると、葵先輩の周りが瞬いて―――すぐに消えた。
それはまるで、流れ星のように。



*



「葵先輩ー!……あれ、いない?」


私がカップ二杯持って戻った時には、既に葵先輩はいなかった。
周りを見回しても、誰もいなかった。
残されたのは、アップルパイが完食されて空っぽになったお皿とフォークだった。



「………不思議な先輩だなあ」


また会えますように、と願いながら、私はテーブルに残されたお皿を片付け始めた。




(20110720)
流れ星、今更ながらですが連載完結おめでとうございます、お疲れ様でした!





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