跳ねっ返りな君と

恋人の待ち伏せは、恋人の特権だと思っているのは私だけでしょうか。



「遅いなあ……」


というわけで、その恋人を学校前で待ち伏せしています。
夏になりかけの季節だからなのか、昼間は少しだけ蒸し暑いけど、この時間帯になるとすこしだけ涼しい。


ぶらぶらと足を揺らして、ベンチに座りながらあの人の帰りを待つ。
あまりにも遅いからもしかしたら帰ったんじゃないかと内心焦っていたら、聞き覚えのある声がした。



「名前…?」

「…!こたろー先生!」



声の主、つまり恋人の琥太郎先生が困惑したかのようにこちらを見ていた。
その後呆れたようなため息をつくと、片手を腰に当てた。
……つまり、お説教モードらしい。心の中でちえ、と舌打ちをする。



「こんな時間にを何しているんだ」

「ただの通りすがりだよ」

「こんな夜中にか」

「…夜のお散歩だよ?」



あからさまな言い訳だなあ、と琥太郎先生が苦笑した。

本当は琥太郎先生を待っていたんだよ、と言う言葉を飲み込んで、私は俯きながら足を再びぶらぶらと揺らす。

すると、琥太郎先生ははあ、と再び大きめなため息をついた。

それを聞いてて、自分はなんて可愛げのない女だろうと思ったら少し悲しくなった。

琥太郎先生、きっと呆れてるんだろうな…



すると、こつこつと足音が近づいてきた。
不意に、頭にふわりと何かがふれるような感覚がする。………え……も、もしかして私、頭を撫でられてる?

琥太郎先生は、よしよしと小さい子供をあやすように撫でるものだから、少し子ども扱いされて拗ねると同時にかなり動揺した。




「な、なに…」

「迎えに来てくれたんだろ?」

「別に、そういうわけじゃ、」

「はいはい。………ありがとうな、名前」

「っ、」



狡い、琥太郎先生はずるいよ。

精一杯の強がりさえ、琥太郎先生はすぐに見抜いてしまう。

なんで、どうしてわかったの?




そういう前に、琥太郎先生はまるで質問に答えるかのようにさらりと言い放った。
優しく、微笑んでいた。



「知ってるんだよ、愛する人のことなんだから」

「………先生のばーか」




琥太郎先生が手をさしのべる。

私は、その言葉と幸せを噛みしめながら、その手を握り返した。

こんな跳ねっ返りな自分でさえ、琥太郎先生は愛する人だと言ってくれるんだ。




(20110603)





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