想いを重ねて

「……あっ、」


1人で教室移動をしていると、向かい側から月子ちゃん達が歩いてきた。


どうしよう。逃げたい。


そんなことを思いながら歩いていると私に気付いた月子ちゃんが駆け寄ってくる。


「名前先輩!こんにちは」

「こ、こんにちは。月子ちゃん」


彼女の偽りのない笑顔が今はとても眩しくて、もう慣れたけど悲しくなった。
どうして私は彼女みたいに可愛くないんだろう。


「名前先輩…?」

「あ、ごめん。それじゃあ私もう行くね」


突然俯いた私を月子ちゃんは不思議そうに見つめている。
本当に私とは大違い。
だから一樹もこの子に惹かれるんだ。


「……もうイヤ、」


1年の頃はいつも一樹が隣にいてくれた。
だけど今は違う。
月子ちゃんがこの学校に来てから、私の居場所は一樹の隣ではなくなった。


なのに、


「名前!!」

「一樹…っ?」


どうして一樹は私の泣いている時に必ず現れるんだろう。


「ったく、探したんだぞ」

「ど、どうして…」


ぽんぽん、と優しく私の頭を撫でる一樹を見上げながらそう言うとふいに抱き締められた。


「今まで悪かった」


ふいに聞こえた声は今まで聞いたことがないほど、弱々しいものだった。
だけど一樹は知らない。
私が月子ちゃんに抱いていた感情を。
羨ましい。
だけどそれ以上に憎くて堪らなかった。


「私は、一樹が大切にしているものを"大切"だとは思えないよ…」

「分かってる」


一樹は月子ちゃんが"大切"。
だけど私は違う。
きっと今までもこれからもそれは変わらない。


「言っておくが、俺が今1番大切なものは月子じゃない」

「え……?」


その言葉に驚いて顔を見上げると、そのままキスされた。


「名前に決まってんだろ」


唇が離れたと思った瞬間、囁かれた言葉に思わず顔が熱くなる。


「えっと、あの…、」

「行くぞ」


本当に?
なんて一樹の顔を見たら言えなかった。
ちらりと見えた横顔は私と同じぐらい赤かったから。


「一樹、」

「何だよ」


慌てて袖を引っ張り一樹の足を止める。


言わなきゃ…!


「大好きっ」


どんなに一樹が月子ちゃんを見ていても、別れようなんて思ったことはなかった。
それぐらい、私は一樹しか見えなかった。


「俺もだ」


そう微笑む一樹は、私の大好きな一樹だった。
ギュッと抱きつくと久しぶりに感じる温もりに口元が緩む。
願わくは、いつまでも君と。
…なんてね。






想いを重ねて
(くひひ、お2人とも熱いね〜)
(桜士朗!?)
(い、いつから…!)



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